『セーター』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
やってしまった。
昨晩、洗濯機に適当にぶち込んだ衣服の中に縮んだセーターを見つけ、朝一番の軽い絶望に頭を抱えていた。
本当に、何も考えていなかった。確か、これを着たまま寝落ちしてしまい、カーペットとの擦り合いのせいで帯電してしまったのが気持ち悪かったので脱ぎ捨て、寝ぼけた頭のまま洗濯機にぶち込んだのだ。
あまり鮮明に覚えていないが、大体そうだった気がする。
虫にくわれ、静電気が発生し、洗濯で縮み……なんとも面倒くさい衣服だ、セーターは。
……しかし、俺はこんなセーターなんて買っていただろうか?
セーター
向い合うひとにも じぶんにも
モコモコのあたたかいセーターを届けよう
ふわっとこころをつつみこむ
あったかいことばをめいっぱい編み込んだ
わたしメイドのセーター
修行が必要だけど......
子どもは3歳までに親への恩返しを全部する、
みたいな話を聞いたことがあるけれど
確かに私のことを大好きでいてくれた時もあった。
あの時代をもっと味わえばよかった。
いつも一緒にくっついてあったかかった。
今では、冷えた体にセーターを重ね着して暖める。
あたしはあとどれくらい
ひとりで意味もわからず生きていくんだろうか。
セーター
玄関を開けたら、そこには彼がいた。自分よりも背が高いから見上げるような形になる。
「入れて」
明らかに寒そうな様子に、仕方ないな、と体を横にずらした。満足げに微笑んで、彼はいそいそと靴を脱ぐ。ふと見た外の世界は細かい雪が降っていた。
どうりで寒いわけだ、とドアを閉めて、すっかり寒くなってしまった体を暖めるためにこたつへと向かう。
「何か飲む?」
手を洗い終わった彼がキッチンからひょっこり顔をのぞかせた。せっかくだから、と甘えてココアを頼めば、鼻歌が聞こえてくる。
少し経って彼が二つ分のカップを持ってこたつへとやってきた。甘いココアが入った方を渡されて、ありがたくいただく。
あたたかい飲み物で内側からさらにぬくぬくと暖まっていたのに、急に足先が冷たいものに触れて、ぴっ、と鳴いた。すぐさま足を引っ込めれば、いたずらっぽく笑う彼が目の前にいた。
じとー、と見つめれば、彼はまたこちらに触れてこようとする。冷たいからやだ、と言えば、彼は少しだけ寂しそうな顔をして下手くそな泣き真似をした。
「だって、寒いもん」
可愛い子ぶったような表情をされても、これは許せない。せっかく暖まったのだから、とこたつ布団にくるまれば、彼は立ち上がって正面からこちらの後ろへと移動する。
後ろから抱きしめるようにこたつに入り、こちらに体重をかけたりしてじゃれてくる。
しばらく構ってやっているとだんだんと暑くなってきて、着ていたセーターを脱ごうとする。しかし、しっかりホールドされているため、上手くいかない。少しでも動こうとすれば、さらにその腕の抱きしめる強さは強くなる。ぺしぺし、と腕を叩いて合図をすれば、耳元で甘い声が落ちる。
「だーめ」
むっ、と唇を尖らせれば、それに吸い寄せられるように彼の唇が落ちる。ちゅ、と可愛らしいリップ音が鳴り、彼はまた満足げに微笑みながら抱きしめる。
「今日の格好、かわいいから。脱いじゃだーめ」
その一言で脱ぐ気も起きなくなったのだから、完全にこちらの負けだ。ずるい。
一年でさよなら、毛玉取るの面倒だし
"セーター"
-セーター-
違う「夢」だけど、
同じ「合格」というスタートを目指してる。
周りの人は、スタートの後のことを語るけど、
今は、スタートまで届くか分からない。
不安に押しつぶされてる日々。
上がらない点数。変わらない判定。
今を生きるので精一杯。
頼むから、完璧を求めないで欲しい。
こうやって、自分を追い込んでいく。
自然と涙が溢れてくるまで。
ただ、ここで辞めたら、今までのものがなかったことになる。
また、自分を奮い立たせる。
こんな日々を、私は求めていたのか?
その答えは、スタートに立ってから分かるのかもしれない。
色々な感情の波にのまれても、また弾いていく。
「一緒に、最高の景色を見てみるか?」
ところどころほつれた
不格好なセーターが、
私のぐさぐさな心と、
どこか共通している気がして
手放せない。
服のカタログを手に取り
セーターのページを捲っては
これでは無い、
と首を振って
やっぱりいつものセーターに腕を通す。
「セーター」
どんよりとした曇り空から
しんしんと雪が降り積もる。
色の無くなった世界に
気持ちまで沈みそうになった
そんな日は。
あたたかい色のセーターを着て
ふわふわのマフラーを首に巻いて
お気に入りのブーツを履いて。
あまくておいしいものがたくさんある
あの喫茶店へ出かけよう。
セーター
セーター
めちゃくちゃ可愛い水色のセーターを買った。
めちゃくちゃ満足。
もうめちゃくちゃ。
お母さんがくれたセーター
デザインはすごく可愛いんだけど
まだブカブカで着れない
でも、そんなことから愛情を感じる
自分って愛されて育っているんだな
わたしも子どもが出来たらセーターを
送って自分の愛情を確認してもらいたい
セーターを編む。
貴方を想う。
簡単そうに思えるけど、実はとても難しい。
不器用な私がセーターを編む。
もう届かない存在の貴方を想う。
それがどんなに儚くて辛いものか、貴方は知らない。
彼(セーターという名前なのだけれど)はひどく寂しがりだ。暑いなあなんて思って脱ごうとするとパチパチパチ。電気の力で私を離そうとしない。下ろした髪がボサボサになるし何よりピリッってしてさ痛いんだよ。気づいてるのかな。私がいないとどうしようもない自分の情けなさとか。気づいてないんでしょうね。いつも私のことしか考えてない。まるでストーカーのようよ。セーター。
そうは言っても外は寒いから出掛けるときは必ず彼を着てかなきゃいけない。パチパチパチ。ああ。また私に張りついてきた。しつこいなあ。それでもセーターを着なきゃ。外は寒い。襟に首を通して右手左手。パチパチ。まただ。ねえ。一体何回言わせるつもり。それでも着ている。温もりからは逃げられない。パチパチ。また。パチ。ねえ。パチ。ねえ。ねえ!もうやめてよ!
どれくらい経っただろうか。部屋から一切の音は無くなっていた。鼓膜が破れてしまったかと思った。遠くから救急車のサイレンが聞こえてそうではないことを知る。彼は無機質に佇んでいた。私の胴体を包み込んだまま。ほんとうに寂しがりなのはどっちなんでしょうね。まったく。あらい(愛らしいの略なのだけれど)繊維の目を弄くったまま私は生まれて初めて涙を流す。もう時間だ。はやく出掛けないと。外は寒い。風邪をひかないように気を付けよう。
俺、男の人が着てるセーター好きなんだよね
だって可愛くない?
それで、萌え袖してもらいたい!
すごい、俺の欲望まみれだ笑
でも、マジで好きなんだよね。
彼氏に着てもらいたい
まだ彼にもらった
セーターは捨てられないまま
クローゼットの奥にしまってあります
セーター
セーター。
それは冬にしか着られないお気に入りのファッションアイテムだ。
今年の冬は、CMでも人気の新作のセーターを買ってみた。数日後に袖を通してみた。その手触りの柔らかさといったら、ずっと触っていたいくらいふわふわしていた。
冬は重ね着で肩が痛くなるのが悩みだ。
でも、買ったセーターは柔らかく軽めなので肩が疲れにくいも嬉しい。
ジャケットと合わせても綺麗めに決まるし、ジーパンと合わせれば外出にもぴったりだ。
この冬は、たくさん着よう。セーターを着て、鏡の前で微笑んだ。
「え〜っ、あっはっ、何その絵柄!」
「えっ?良くない?寒いからさ、買ったばかりのセーター」
「うーん、何か海外ドラマの学生が着させられてそう」
「ええぇ」
「うわぁ、すごいジャケットだね」
「どう?良くない?春らしく明るい感じ」
「うーん、そんな色初めて見たよ」
「そうかな?」
「あれ、クーラー寒かった?」
「いやいや、今日めっちゃ暑いじゃん」
「そうだよね?半袖の方がいいんじゃない?」
「えっ、これ半袖だよ!オーバーサイズってやつ?」
「ごめん、今日仕事だった?」
「今日は休みだよ。なんで?」
「スーツ着てるから」
「スーツではないよ!キレイめコーデにチャレンジしてみた」
ちょっとズレてる君が面白くて可愛くて、今年の冬はどんなセーターを買ってくるのかな。
『セーター』
「迷いセーターを探しています」
電信柱の張り紙にそう書いてある。
「とても人懐っこいです。お心あたりある方はご連絡ください」
帰ったほうがいいんじゃないの?
と、わたしはセーターに話しかける。
迷ってるんじゃなくて、家出なんだけどな。
と、セーターは答える。
わたしと同じだね。帰ろ?
【セーター】
洗えば洗うほど、小さく縮んでしまうものって、なーんだ?
え? セーター?
はずれー、正解は、あなたの心。
世間の荒波に揉まれれば揉まれるほど、
綺麗に洗おうとすればするほど、
独立して個性のあった感情という繊維が、
ぎゅーっと、ひとまとまりに縮こまっちゃうの。
そうか、セーターもそうだね!
あなたはセーターに似てるかもね!
デリケートなのに、寒くて冷たい社会に放り出されて、主という上司を温めなくちゃいけない。
セーターみたいだね?
セーター
すぐに現れる毛玉。
お気に入りのセーターだって、
一年もすれば、
毛玉だらけになってしまう。
でもね、このセーターだけは
ずっときれいなままでとっておきたいの。
だってあなたがクリスマスに編んでくれた
大切な大切なセーターだから。
だから毛玉さんたち、
まだ来なくていいからね。
落ちていく
音の中に
グランドぴあのの
弦の
うねりの中に
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セーター
お母さん
もう一枚、羽織りなよ
外は 寒いよ