『やるせない気持ち』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
そうかあの人も同じなんだ
夕方の電車で目の前に立っているお姉さんの
スマホの画面が見える
さっきから何度も同じ場所を周回しているってことはイベント開催中なのかな
報酬もらって終わってもまたイベントなんだよね
ゴールはサ終なのかもしれない
「やるせない気持ち」
ほとんどの人は気づかずに
知りもしないで跨いでる
あの狭い穴に落ちていく
いとも簡単に落ちていく
一瞬にして消えてしまうから
ほとんどの人が気づかずに
何者とも知らず跨いでく
頬づえの左手は
いつしか抱き込むように
右肩を掴む
静寂の冷気は人肌に馴染み
『大丈夫だよ 』って
ぎこちなく…、
私がワタシに懐く夜
志望理由書を2ヶ月前から考えて、段階を踏んで先生に添削し続けていたのに、出願ギリギリになってもまだ出来ていない。自分なりに早めに取り組んで、早く完成させて面接練習をしたかったのに。どうしてこうなった?その理由は先生に添削する度に失望されるのが怖かったから。先生の迷惑をかけたくなかったから。今最大に迷惑をかけてどうする。最低すぎる。
早くに取り組んだのに、私と同じ大学を志望している友達は2週間前に初めて書いて、2回の添削だけで許可をもらっていた。恋愛やゲームしかやっていないのに。周りとじゃれ続けているのに。なんですぐに通るの?「やばーい」って、本気で思ってる?文章ぐちゃぐちゃだと言っているけど、ならなんで2回で通るの?活動めんどくさーいって、ならやめればいいじゃん、私が本気で取り組んでる活動でそう言わないでよ。
でも、知ってる。友達は努力をしている。成績だってトップだし、活動もすごい。ただ、本人にそれが努力だってわかってないだけ。当たり前だと思っているだけ。ただ、本人は元々専門学校に行きたがってた。成績がもったいないからって、先生に大学へ誘導された。「いやいや、そっちは私より頑張ってるっしょ、いけるいける!」そりゃ本気で大学に行きたいと思ってなかったら余裕になれるよ。私は、本気で大学に行きたいんだよ。なのに、文章ばかりが足りなかった。表現が下手すぎた。だから、早めに始めたのに。こんなにダメだったんだな。
友達でいたいよ。だって結構仲良くしてくれたし、沢山お礼したいこともあるんだよ。一緒に合格できたらって、思ってたよ。でもごめん、私は難しそう。
明日、先生に最後の添削を見せに行く。これでボロボロに言われるんだろうな。もう大学に行くなって言われそうだな。行きたいのに。これまでそのために頑張ってきたのに。何もかも制限して、ご飯を食べる暇も惜しんで頑張ってきたつもりだったのに。所詮、つもりだったんだね。つもりにならないように、死ぬ気でやってきてたのに。それも、つもりだったんだ。
努力してないと言われても、心当たりあるにはあるよ。少しだけサボる日があったりとか。それがよくなかったのかな。
きっと、友達は受かるんだろうな。受かるに決まってる。
人の役に立つために生きてきたのに。そのために大学に行くのに。自分じゃなくて、周りの人を心配しすぎたんだろうなあ。
気持ちを書き殴っただけです。でも、これで一旦書きなぐるのはやめます。そんなことしてる場合があったら、志望理由書かけって話ですよね。
諦めないことが私の取り柄だったんです。今でもまだ、取り柄でいたいです。なので、頑張ります。徹夜してでも、何度も書き直して、頑張ります。
「許せない気持ち」
私は自分自身が許せない。
そう思ってきた。
自分で傷つけて生きてる実感を感じて、でも生きている意味がないって感じて死のうとしての繰り返しだった。
人を信じても裏切られる。
必ず最後は裏切ってみんないなくなる。
自分の何が悪いのか。何度も悩んで直そうとして。
だから自分自身がやってきたことが許せなかった。
けど気づいた。
自分自身許せないんじゃなくて周りの人間が許せないんだって。
なんであの子は。とか
なんで。ってばっか気付いたら口にしていた。
誰も友達がいないから。彼氏に浮気ばっかされてきた。
笑っちゃうよね。自分ばっか好きで。
自分のこと心から必要としてくれる人はいるのか。
自分のこと心から大切に思ってくれて愛してくれる人はいるのか。
この心の苦しさは誰にもわからない。
軽蔑するなら勝手にすればいい。
「君に伝えないことの罪」
こんな時、どう声をかけたら良いのかわからない。
君の恋をずっと見守っていた。
どんな時も彼だけを見つめて、信じる君の表情すべてを、焼き付けるように、刻みつけるように。
もう永遠に彼に想いを告げることはできない。
言葉を交わすことさえも。
本当は知っていたんだ。
彼が君のことをどう思っていたのか。
今それを君に伝えたら、君は彼のことを永遠に想い続けてしまう気がする。
叶わない恋だとわかっている。
君が彼への想いを断ち切ったとしても、君は僕の想いを受け入れることはないだろう。
罪の意識は永遠に残る。
いつか君が彼への想いを断ち切る時が来たとしても。
絶対に言えない秘密を抱えて、彼のことを想い、涙を流す君を見つめ続ける。
────やるせない気持ち
恋人、仕事、一人の時間、
何がやるせないって全部やるせないよね。
恋人の一挙一動がまずやるせなくて。
仕事の理不尽な圧力がやるせなくて。
一人の時間を有意義に過ごせないなんてやるせない。
何よりそれを人生と考える自分の思考回路がやるせないというか、空虚感を覚える。
どうしたら、上手くやれたなーって感情になれんのかな。
側にいるのにいない。
手を繋いでも、抱きしめても、優しくしても、絶対に心が私に向くことはなかった。
無償の愛をあげて、穏やかに笑って微笑んで、2人で楽しく過ごせれば良いと思っていたけど違った。
私が優しくした分だけ、愛情を返して欲しい。
そんなワガママを言えない、隣にいるのに、1人で息をしているみたいな感覚。
ただそんな自分を、やるせない感情さえ口にできない私を、バカみたいに大笑いするしかなかった。
『やるせない気持ち』
覚める、朝の5時。
焦げる、かたい食パン。
避ける、何回も同じ方。
折れる、またこの鉛筆。
割れる、気に入ってたグラス。
遅れる、早く帰りたい電車。
切れる、充電したはずのイヤホン。
まわる、昨日と同じ今日。
まわる、今日と同じ明日。
覚める、朝の5時。
#やるせない気持ち
山間の田舎、国立大学があるおかげでかろうじて就職前の若者ならいる町。とはいえ夏休みの今は皆帰省しているのか、あるいは旅行に行っているのか、普段なら盛況だと記憶している金曜の居酒屋も人が少ない。料理や飲み物を持ってあくせく動いているのはパートのおばさんか、どこか諦めた顔をした若者だ。きっとこの町出身なのだろう。帰省する先はないし、遊びに行く相手もいない。暇つぶしに働いている、と言ったところか。若者は失礼します、と身に覚えのある表情で座敷に上がり、カプレーゼ—それはデザートじゃないだろとツッコまれながら私が頼んだ料理—を運んできてくれた。
「あぁ……なんで彼氏できないんだろう」
佳澄はカプレーゼをつつきながらため息をついた。私は何も言えずに曖昧な笑みを浮かべてジャスミンティーを飲む。恋愛は私に向ける話題としては一番不毛な部類なのだけれど、お酒が入った佳澄はそのことを忘れているらしい。
「夕実乃はどうなの?なんかそういう話ないの?」
「ないかな。そもそも家から出ないし……。でも本当に不思議。佳澄、彼氏いそうなのに」
「よく言われる。彼氏いない歴イコール年齢なんだって」
そう言って佳澄はグラスを煽った。本日3杯目の白ワインーアルコールとしては5杯目ーが空になる。下戸な私とは異なり酒豪な佳澄だが、食事が始まってまだ1時間も経っていない。流石に飲み過ぎではなかろうか、と思ったが口には出さなかった。
佳澄と私の関係は大学時代まで遡る。出会ったのは地元の大学のゼミで、同時期にイギリスに留学した際に仲良くなった。いや、仲良くなったというよりは佳澄が仲良くしてくれたと言う方が正しい。国内だろうと国外だろうと、別に望んだわけではないのに気がついたら独りで過ごしている私は、ゼミでも学生の輪からやや離れた、一匹狼のようなポジションでいたのだが、留学中は佳澄が友達の輪に私を入れてくれた。おかげで無事に乗り切れた場面も多く、ゆえに私は佳澄に心の底から感謝を捧げている。
だから、「お盆とは少しずれてるけど、予定が合えば久しぶりに帰省するから会わない?」という連絡が来た時は二つ返事で了承した。恩人、佳澄からの誘いを断るわけがないし、現実問題としてもリモートワークフレックスタイム制の私が、予定を合わせられないわけがないので。朝7時から仕事をすれば16時には上がれるのだから、ディナーに遅れるわけがない。まぁ、素敵なディナーができる店なんてないので、行き先は学生の時と変わらず居酒屋だが。
「出会いが欲しい」
「この山ばかりの地元でそれならわかるけど、佳澄は都会で働いてるんだし、遊びにだって出かけるし……出会う環境はあるでしょ?」
「それはそうなんだけどさぁ」
「そうなんだけど……どうしたの?」
私は首を傾げてみせた。あくまでも軽やかに、深刻にはならないように。とはいえ、話を逸らされないように口調と仕草に気をつける。輪切りにされたトマトからモッツァレラチーズが滑り落ちた。あぁ、もう。
卒業後、東京都内の会社に就職した佳澄は盆も正月も地元に帰ってこなかった。某SNSでの様子を見る限り、イベントにライブにバンド活動に、と休日も忙しい日々を送っているようだったのでさもありなん、暇がないのだろう。趣味に全力の明るいオタク、それが佳澄であるので帰省しないこと自体は気にしていなかった。逆に今年、社会人4年目の今年、最盛期は過ぎたとは言えまだまだイベントやフェスの多い8月中に地元に帰ってきた佳澄が気になった。
「……別にね、仲良くはなれるの。でも、友達止まりというか、異性だと思ってもらえてないというか」
「そう?こんなにかわいいのに?」
思わず私は食い気味に言った。佳澄はかわいい、と思う。私が友達全員をかわいいと思っているタイプの人間なので、友達フィルターがバチバチにかかっているのは否めないが、それでも佳澄はかわいい、と思う。色白の肌、明るめの髪色、少し柴犬っぽさのある三角形に近い形の目、いつもニコニコと笑っているかのような口元、柔らかな丸い輪郭。いつまでも見ていられる愛嬌のある佳澄のかわいさは、唯一無二だと私は思っている。
「別にかわいくはないよ。やっぱりあれかな、長女かつ下が弟ばっかりだとそうなるのかな。甘え下手だし、可愛げはないし、下手に男子側の話題がわかっちゃうから」
「さぁ、一人っ子にはなんとも……。でも、佳澄がかわいいのは確かだよ。自然体っぽく見せてるけどファッションだって気を使ってるし、アクセサリーだってセンス良いし、声とか雰囲気もかわいいのに。ぱっと見でわかるくらい人の良さ、性格の良さ、美的センスの良さが滲み出てるもん」
「そんな言うの、夕実乃だけだよ」
「そうなの?魅力の塊なのに?」
私はファッションに疎いので詳しいことはよくわからないが、佳澄の服装は佳澄に合っていてかわいい、と思う。なんと言ったら良いのかわからないが、とにかく佳澄らしいのだ。モスグリーンに小花が散るシフォンのワンピースも、耳にぶら下がる雫型のピアスも、手首の銀色のバングルも。座敷に入るまではラフなグラディエーターサンダルからのぞいていたペディキュア、手元を彩るネイルチップ、手羽先を食べる時に髪を縛っていた飾り付きのヘアゴム……どれもが佳澄と調和して、愛らしい。無理な背伸びもなければ、身をやつしているわけでもない。自分にぴったりな服を選ぶのに長けているな、といつも思う。
「みんなが夕実乃みたいに思ってくれればいいんだけどね。っていうか、夕実乃こそ都会に出ればいいのに。磨けばすぐ彼氏できると思うよ」
「いや、求めてないし……」
「まぁ、そうだろうけどさ。私なんて見た目は並みオブ並みな人間だから、中身で勝負ってなるけど、中身で勝負になると恋愛枠に入れてもらえなくなるというか」
「うーん、なんでだ?」
「わからない。趣味の合う人が良いからって趣味から関係に入るのが良くないのかな。友達になっちゃって」
「趣味、割と定番だと思し、それ以外って社内恋愛でもない限り思いつかないんだけど」
「社内恋愛は嫌だ、面倒くさいし。それに前に話したと思うけど、高校の時とかも同じバンド内で付き合って関係悪くしたらどうしようとか思っちゃって結局一歩踏み出せなかった人間だから、社内恋愛はできない。無理だもん、破局した後のことを考えると」
「それはそうか……?いや、会社の人に直に会うことほぼないからあんまりイメージが湧かなくて」
「リモートならいいかもね。……って、この山の中からじゃ他県になるだろうから、実現したらネット恋愛にならない?そうそう会えないでしょ、リアルで」
「多分。ほぼネット恋愛だね」
「うわぁ……それを社内恋愛と称するのはやるせない気持ちになるわ。社内じゃないじゃん」
「そうね……。物理的には社内じゃないけど、VPN繋ぐとネットワーク的に社内だからバーチャル社内、みたいな」
同じ建物にいるわけではないが、VPNを使えば社内のネットワーク、会社の社屋にいる時と同様のネットワークになるわけで、それは社内と言えるのか、否か。言い換えるならVPNを繋いだパソコンがある自室はオフィスと言えるのか、否か。
(いや、社内恋愛の社内って人に対してかかってるよな?)
そんな考えが頭をよぎるが、口にしない。相手はほろ酔いだ。真面目な返しをし求められているわけではないだろう。やっとのことでモッツァレラチーズをトマトに乗せ直すことに成功し、急いで口に入れる。もう一度滑り落ちられても困るので。
「バーチャル社内……せめてバーチャルリアリティ使ってからにしよう?」
「VRかぁ、あれ酔うんだよね。長時間やるものじゃないし、結局アバターだし」
「そうだよね。相手の顔は見えないわけで……でもバーチャル社内で恋愛したら教えて」
「いやいや、だから、しないって」
「わからないじゃない」
「わからないのは佳澄の方だよ。人付き合い上手いし、別に極端に男性が少ない趣味でもないし、なにより可愛いし、案外これから良い人ができてゴールインするかもよ?」
「無理無理。可愛くも可愛げもないもん」
「言ってもまだ26歳だし、佳澄は求めてるんだし」
「無理だよ……求めててこれなんだから……そろそろアラサーなのに」
そう否定する佳澄に、やるせない気持ちが湧いてくる。
(なんでかなぁ……)
佳澄、かわいいのに。付き合って損する相手じゃないのに。私のように引きこもり同然で人目に触れていないというわけじゃないのだから、世間の男の目は節穴なのだろうか。それとも、佳澄に相応しい人がまだ現れていないのか。わからない。わからないし、私が助太刀できる問題でもない。何せ彼氏を欲しいと思ったことがないし、友達も知り合いも少ないので。
私はグラスを口元まで掲げて、佳澄にはわからぬようため息をつく。ジャスミンティーを飲み干した。どうにもできないやるせなさで、爽やかなはずのお茶の味は苦く感じた。
助けたい。たくさんの子供達。
この世界に生まれてきて、この世界に絶望して欲しくない。
彼らを守れる存在として、自分には何が出来るだろうか。
大したことは出来やしない。
それでも、辛い思いをしている子供達の話を聞くと、やるせない気持ちで自分がもっと辛くなる。
遠い国の戦時下の子供達はもちろんだが、この日本でも、まともに食事も出来ない子供がいるという。
この飽食の時代に、ホントにやるせない。
いろんな親がいるだろうが、頑張って働いても、暮らし楽にならざりの家庭もあるだろう。
でも、親が頑張らなきゃ、子供達にはどうにもならない現実がある。
望んで子供を産む親はいるが、望んで生まれてくる子供はいない。
責任は取るべきだ。親としての責任を。
虐待する親は、社会から虐待されてその痛みを知るべきだ。
結局、歯向かうことの出来ない相手に対するイジメに過ぎない。
しかも、家庭という閉鎖的な場所ならバレないだろうという卑劣な考えもあるはずだ。
そんな奴らに、人の親となる資格はあるのか?
確かに、資格がなくたって子供は作れる。
だが、人の親としては失格だろう。
いや、人間としても失格だと思う。
いつになく熱く語っているが、私自身に親に不当な扱いを受けた過去はない。
感謝しかない育てられ方をした。
だからこそ、誰もが同じような子供時代を過ごして欲しいと切に願う。
そして、人の親になり、自分の子供に対しても、愛情いっぱいの接し方が出来るように。
車の運転や学校の進学に資格や試験が必要とされるのに、子供を作ることにライセンスが不要なのはおかしくないだろうか。
その人の子供に対する考え方を知れば、少なからず不遇な生命の誕生を防ぐことは出来ると思うのだが。
いろんな障害や抵抗があるのかな。
まず第一に守るべき存在が子供達だと思うんだけど。
他の動物達も、命がけで自分の子供を守る。
生き物の本能なんだと思う。
それに反する行為をするのは、人間くらいなんじゃないかな。虚しいね。
政治経済を偉そうに語る前に、家族への愛情を語れる人間でありたい。
…とはいえ、語り過ぎて長くなるのもウザいおっさん認定されそうだ。
え?もうすでにされてる?
それはやるせない。
このやるせない気持ちを、すべて我が子にぶつけて慰めてもらおうか。
日々頑張ってるお父さんにも愛の手を。
ずっとこの気持ちを抱えてる。
何かあったわけじゃないのに、憂いと悲しみが付き纏う。
重く厚い雲が上にあるみたい。晴れを想像できない。
いくら紛らわしてもついてくる。
楽しいことがあっても少し離れたところでこっちをじっとみつめてる。
どうしようもできない。この状況は自分で作ったものなのに。
やるせない気持ち
くちびる切れた、ご飯に血の味。
やるせない気持
片付けても
片付けても
終わらない
😵💫😵💫😵💫
やるせない気持ち
もう駄目なんだ
どんなに頑張ったって、心の糸がちぎれてしまったら
全てが無味になる
生きたかった
もっと、もっと、もっと、もっと…
死にたいんじゃない、生きたかったんだ
でももう生きれないから、仕方なく死ぬんだ
それしか方法がないからさ
昔は好きだと思ったら全力でアタックしていたと思う。
でも大人になった今、そんな簡単に好きだとアタックは出来ないし周りにバレるのも困る。
昔みたいに好き1つの心で動けない大人。
全力で好きが出せないのはやるせない気持ちになる。
「やるせない気持ち」
この気持ちに溺れてしまったら
私はもう手を伸ばすことが出来ずに
沈んで、やがて……。
【♯82】
お題『やるせない気持ち』
サークルの同期の挙式と披露宴に呼ばれた。正直、その子とはすごく仲が良いわけではなかったけど、親しい友達が参加するから久しぶりに会いたくて参加した。
そうしたら、ものすごい数の新婦側の参列者がいた。私達はそれにおののいた。でも、果たしてこの中に新婦と親しい人間はいるのかと思う。席次表を見ると、私達大学の同級生から高校、中学、小学校、さらには会社の人と……たぶん、知り合い全員呼んだのではないかという具合だ。
さて、いよいよ新郎新婦の入場が来た。
ただでさえ、名のしれたホテルの大きなステンドグラスが目立つ式場だけでもすごいのに豪華なオーケストラの演奏までついてる。
そして、重たい扉から出てきたのは長身痩躯の目鼻立ちが整ったイケメンだった。
その時、私は暗澹たる気持ちになった。新婦には日頃からイジられてた。不快なのも含めて。だから、親友がいなければ欠席しようと思っていた。
私のことをコケにしてきた女がイケメンをつかまえ、噂によるととんでもなく年収が高いという。
本当ならそのイケメンにその女がいかに性格が悪いか、思い知らせてやりたいがせっかくのお祝いのムードに水をさしてはいけない。
続いて、新婦が父親と入場してくるがウェディングドレス姿を見て「きれい」と言葉をかけてやる気が失せた。
私は顔を笑顔に固定したまま心のこもらない拍手を続けた。
やるせない気持ち
振られた
理由は好きだけど好きがわからなくなったかららしい
全然意味がわからない
告ってきたのになんなんだろう、
全然すっきりする振られ方じゃない
ずっともやもやしている
これが、やるせない気持ちってやつか、
「海へ行きたい」
私の何気ない一言が発端だった。
今日も今日とて暑いことに辟易し、思わず口に出してしまったその一言。
今年はバタバタしてて、結局海に行けなかったなあという、ただの愚痴である。
言ったところで、普通は何も起こらない。
だから、特に意味もなく口に出した。
けれど今なら思う。
軽率だったと……
愚痴を言った時、私は友人の沙都子の部屋に遊びに来ていた。
億万長者の友人の家に、である。
私の愚痴を耳ざとく聞いた沙都子は、私を見るとニヤリと笑う。
コレまでの付き合いから、『碌でもないイタズラを思いついたのだろう』と高を括る。
何か変なこと言い出したら逃げよう。
そう思っていたのだが、意外にも沙都子は何も言わず、ゆっくりと腕を上げるだけだった。
次の瞬間、沙都子は指を鳴らす。
私は『やっぱりお金持ちって指パッチンするんだな』と呑気に考えていたのだが、それがいけなかった。
いきなり、部屋に屋敷の執事やメイドが入って来たのである。
突然の出来事に驚いて固まっていると、入って来たメイドの数人がこっちに一直線に向かってきて、私を取り囲む。
「失礼します」
メイドの一人がお辞儀をしたかと思うと、急に体が浮き上がる感覚を覚える。
数人のメイドたちが私を担ぎ上げたのだ。
「待って、何これ!?」
抗議の声を上げるが、誰にも答えてもらえないまま、屋敷の外まで運び出される。
抱えられて体の自由が利かないのだが、なんとか体をねじって進行方向を見る。
すると屋敷の庭にヘリコプターがあるのが見えた。
さすが金持ち、ヘリコプターも持っているのか!
……もしかしてアレに乗るの?
そう思っていのも束の間、私はヘリコプターに押し込まれる。
自分に何が起こったのか何も分からないが、気持ちを落ち着かせるために深呼吸していると、沙都子が優雅に乗り込んできた。
乗り込んですぐ沙都子は、ヘリコプターのパイロットに指示を出して、ヘリコプターはそのまま離陸する。
そして離陸して数分、ようやく気持ちが落ち着いた私は、沙都子に質問をぶつける。
「沙都子、これは何?」
「何って……
決まってるじゃない。
海へ行くのよ」
「海!?
なんで海!?」
私が叫ぶと、沙都子が不思議そうな顔をする。
「あなた、『海行きたい』って言ったでしょ。
それを聞いて、今年は私も海に行ってないことを思い出してね。
それで海に行く事にしたの」
「いやいやいや」
確かに海へは行きたかった。
だけど! こんな急に! 誘拐みたいな形で行きたいとは一言も言ってない!
沙都子は金持ちだからなのか、ときおり突拍子の無い事をする。
「沙都子、いい機会だから言っておくけど、海に行くのは入念な準備と計画がいるの。
こんなに急に連れてこられても、泳げないよ」
「まさか、泳げないの?」
「違うわい!
水着を持って来てないの!」
「ああ!」
沙都子は納得がいったのか、両手を叩く。
さすがに分かってくれたらしい。
ここまで来て海を見て帰るのだけは避けた――
「そこは心配いらないわ。
途中でデパートによって買いましょう。
今回は私が連れ出したから、買ってあげるわ」
「は?」
沙都子の発言に間の抜けた返事をしてしまう。
そこで、『買ってあげる』っていう発言が出る辺り、沙都子は金持ちなんだと思い知らされる。
私の方は、新しい水着を買うかどうか迷って、結局買わなかったくらいにはお金が無いというのに……
これが広がる貧富の差か……
あまりの境遇の差に腹が立も立たな――
腹が立つから、うんと高い水着を買わせよう。
「ところで……」
沙都子が歯切れ悪く、声をかけてくる。
やましい事を考えていることがバレたかと思って身構えるが、沙都子の顔はこちらを気遣う表情だった。
「今思い出したんだけど……
あなた高所恐怖症だったわよね。
大丈夫なの?」
「へ?」
沙都子に言われて窓の外を見る。
いや見てしまった。
ヘリコプターから、私たちの住む町がはるか下に見えた。
「うわあああああ。
下ろしてえぇ」
「ちょっと、暴れないで」
「ああああああ」
「悪かったわ!
だから少し落ち着いて!
計画変更よ、近くに降りれる場所で降りて!」
「了解!」
私は地獄の数分を耐えたのちに、ヘリコプターから下ろされる。
降りたすぐそばには、当たり前の様に高そうな車が停まっており、私は促されるまま車に乗り込む。
もう突っ込む気力が無い……
行くだけでもコレなのに、海に着いたらどんなイベントが待っているのだろうか?
ビーチ貸し切りとかしてないよね……
一行は、私が抱く不安と若干の吐き気を知らず、車はまっすぐ海へと向かうのだった。