『たそがれ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
夕暮れに黄昏れる。
この世で一人しかいないかのように。
猫だって たそがれたい時があるのよ。
まあるい小さな背中から
そう聞こえた気がした。
太陽の光が日いちにちとやわらいで
そっと二の腕を撫でる風は心地よく
ガラス越しの西陽が床を暖かく照らす
レトロな景色に全てが変わっていく
そんな優しい時間
「たそがれ」
#223
翌日彼は行動に出る。
具体的な目標はないが、ただただ外の世界に
踏み出していく。一歩一歩何かを探すように
ただひたすら進んでいく。
辺りはもう黄昏時。
彼は何も見つけられなかった絶望感と共に、
一歩を踏み出せた勇気に少しの喜びを感じ、
帰路につく。
たそがれ空がとても綺麗だと気付いたのは、彼の視線の行く先を辿ったからだった。
日誌をわざと書かずにいた。先生から頼まれていた仕事を、放課後になるまで忘れたフリをしていた。
優しい彼はきっと付き合ってくれると分かっていたから。
オレンジ色の光を一直線に見つめる彼はとても綺麗で、今にもその光に吸い込まれて消えていってしまいそうだった。
わたしが好きになってしまった彼は、時折とても儚い表情をする。ここにはいない誰かを、ここの景色と重ねて、愛おしそうに眺めている。けれど、わたしから見える彼の瞳にはこの景色しか映っていない。空はたくさんの色が混ざっていて、それでもわたし達に届くのはオレンジ色だけ。彼は、そんなこの景色と、誰を重ねているのだろうか。
「ごめんね、色々忘れちゃってて。」
彼がここにはいない誰かを見つめていることに嫉妬して、わたしは声をかけた。数秒してから、彼の瞳がわたしを捉えた。
「ううん、大丈夫。そういうこともあるよ。」
彼の声はとても聞き心地がいい。ふかふかの布団にくるまれているような気持ちよさを味わえる。
わたしに向ける視線もあたたかい。笑顔もやわらかくて、カメラを持っていたらシャッターを切っただろうな、なんて思う。
彼の声も視線も笑顔も、彼の全部をわたしが独占できたらいいのに。
ああ、彼と隣の席になれたあの日から、わたしはワガママになりすぎている。
彼の顔にオレンジ色の光が差して、影ができる。その美しさをいつまでも、わたしが独り占めできたらいいのに。
彼の持つシャーペンは淀みなくスラスラと動いている。
日誌は未だ真っ白のままだ。
帳を引っ掻いておろした
薄暗いなか月明かりくらいに
照度落とした好意
抱えて眠るだけで
夜明けに失うのを
願ってやまない
誰だろう? このお兄さん。
なんだか、少し怖い人に見えるけど。
オレが戸惑っていると、金髪のお兄さんは、優しく頭を撫でた。
ああ、なんだ。この人は、信頼出来る。
オレは、笑顔を向けて、知らないお兄さんに自己紹介した。
「たそがれ」
たそがれ時夕日を見ながら考える
太陽は終わるときさえ輝き誰かを照らす
私は私さえ照らせない
『たそがれ』
たそがれてる背中
たそがれてる人生
たそがれてる空
たそがれてる神
たそがれてる赤ん坊
たそがれてるアイス
…たそがれてるって何?
テーマ:たそがれ #322
たそがれ時の空を見上げ
君と最後に話したときのことを思い出す。
あの時俺が。
はっきり言っていれば未来は変わっただろうか。
君がまだ俺の隣りにいてくれただろうか。
この空を2人で見上げる世界線は存在しただろうか。
たそがれ時の空を見ていると切なくなる。
黄昏時。
あの独特の空気感と切なさが、少し好きだったりする。
ずっと続けばなぁなんて思うけれど。
きっと刹那的なものであるからこそ、良いものなんだろうな。
〝たそがれ〟
黄昏時の通学路
堤防の上に
猫が寝転がってた
夕日を浴びて黄金色に輝いていた
撫でようとしたら「にゃ〜」って堤防から飛び降りちゃった
残念な気持ちで歩き出したらまた猫を見つけた
黄昏時は猫が多い気がする。
触れたことないけどね
「たそがれ」
沈む夕日を目の前に、僕はただ一点に窓の外を見つめる
「何見てるのー?」
「夕日だよ。この時間帯は夕日がとても綺麗で好きなんだ」
「本当だ!綺麗!私も一緒に見てもいい?」
「…もちろんだよ」
実は夕日が好きなんじゃなく、夕日を見つめる君の瞳が好きだなんて、口が裂けても言えないな笑
みんながワイワイ騒ぐ輪から1人抜け出して、ベランダから静かに沈む夕日を眺める。「何たそがれてんだよ」すぐ後ろで声がする。振り向かなくても誰だかわかる。「久しぶりだな、皆んなで集まるのは」「だな」2人の長い影が消えて、1番星が輝くまで文字通りたそがれた。
マジックアワーたそがれ
夕凪が目に染みる。
夜に近づいた海は、生ぬるい塩分の匂いだった。
宿から少し行くと、すぐ、海岸になる。
この辺りは、海と近い街だった。
私は近くの防波堤に座り込む。そこからは、10月の、赤く染まった海原がよく見えた。
ひどく穏やかな海に、私は一時の迷いを覚えた。
幼くして捨てられた私を拾い、育ててくれたボスに恨みなど無い。
しかし、ボスを裏切り、組織を抜けた朝ほど、清々しかったことも無かった。
組織に雁字搦めな生活に、いつの間にかプレッシャーを感じていたのだ。
若い頃はそれが分からず、迷惑をかけたものだった。
今更、思い出す必要など無い、過去の記憶なのだ。
私は、コートの内ポケットから、手紙を出した。
昔馴染みの店に、届いた手紙らしかった。私の行き先が分からなかった組織が、苦肉の策でそうしたのだろう。
今朝、久しぶりに店に行くと、直々に渡されたのだ。
封筒には、半年前の消印が押されている。
中から便箋を取り出す。
ボスの容態が悪化している。そう簡素な文で書かれた手紙だった。私は暫く、それを眺めていた。
組織の連中が用意した、私を誘き出す罠であることは判りきっている。
昔から、よく使われる手口なのだ。
私は、手紙をもう一度読んでから、コートへと戻した。
夕凪はとうに止み、秋風が吹いていた。
後ろから気配が近づいてくる。
私は、何事かと思い振り返った。
私のいる防波堤の影から、ヒナが顔を出す。
「こんなところにいらしたら、身体に障りますよ」
宿の若女将は、随分と世話焼きな娘だった。
2年前の私は、身分を偽り、転々と職を変え、一つのところに落ち着かなかった。そんな私を、迎え入れたのはヒナの父親が営む宿だったのだ。
なんとかこの街で仕事を見つけた私の、世話をしてくれたのも、ヒナだった。
「晩ごはんが出来ましたから、早く帰ってくださいな」
それだけを言いに来たようだ。ヒナは、ほほ笑み、手を降って宿の方へと戻って行く。
海の方を見る。
水平線の赤が、まもなく、消えようとしていた。
私はその彼方を見つめた。
日が暮れる。内ポケットには手紙があった。それを捨てられないまま、私は佇んでいる。
『たそがれ』
あの日、君は言った。
「生きてね。」
その言葉が僕を苦しめるんだ。
だって、こんなにも長く僕を縛るのだから。
たそがれ/
昼休み窓の外を眺める君
あぁまただ
誰のこと考えてるの
私の問いに
_ _ 先輩
そう答える君
海沿いを1人で歩く
海風が気持ちよく
ずっと歩いていられる
たそがれ時に見える景色が
特にお気に入り
さて明日からもまた頑張ろう
たそがれ
黄昏て
君は
帰っていくんだね
君の偽りの家へ
夕飯?
そう尋ねても
何も言わない
細くしなやかな身体と烏の艶を纏った黒髪から
放ったほのかな香りに僕は何も言えず
本当に夕飯を食べに帰るんだよね?
その一言を言いたかった。
違うよね?
君が消えて行ったのは
君の家と真逆の寂しい繁華街
寂しいよ
きっと君もそう言いたかったはず
同じ気持ち交わらず
君が汚れていくだけ。
そう、僕は何も言えず。
去年の秋にありえない出会いをした。
一瞬で心を奪われ、nのこと以外考えられなくなった。
黄昏の中、nのことを思ったあのビルは取り壊された。
nとの仲も終わった。
今年の秋、黄昏の中、別のビルでnのことを思うのか。
ダメだなぁ