テーマ「逃れられない呪縛」
小学生の頃に同じクラスだった男の子から「お前なんて居ても居なくても変わらない」と言われたことがずっと忘れられないでいる。
イジメのターゲットにされていた私は毎日学校に行きたくないと毎日思っていたが行かないで怒られるのも面倒で頑張って行っていた。
それは中学まで続き、高校になってからはピタリと止んだ。
やっと平穏な日々が始まると思ったが学校行事では誰かと居なくてはいけないのでとても面倒で憂鬱だった。
そんなコミュ障の私でも何とか高校を卒業し就職をした。
部活をしていた為、バイト禁止で働いた経験が無かった私は毎日覚えることが沢山あって大変だった。
それでも時間に追われる生活だったから何とかこなし、毎日代わり映えの無い日々を過ごした。
勤務時間が終わり、帰る準備をしようと更衣室に入ろうとしたところベテランの先輩達が私の事を話していた。
「ねぇ〜新しく入ったあの子…一生懸命やってるのは分かるけど覚えるの遅いわよね…?
こっちの仕事が増えて嫌になるわ」
「ほんとよね…あの子が居ない日の方が仕事早く終わるし」
「若いから上も入れたんだと思うけどあんな子居ても居なくても変わらないわよね」
クスクスと笑う先輩達の声を聴いてしまい、中に入る事が出来なかった。
しばらくして部屋から出てきた先輩達が居なくなるのを待って更衣室に入った。
「昔、あいつに言われた言葉…もう聞かなくて済むと思ったのにここでも言われるなんて…最悪」
どこに行っても言葉の呪縛からは逃れられない。
誰か私を必要としてくれる人は現れるのだろうか?
テーマ「突然の別れ」
「俺たち、別れよう」
2人きりの帰り道、彼が静かに告げた。
「分かった。今までありがとう」
突然言われたのにストンと自分の中で受け入れられた。
別に初めからこの人とは恋愛感情があって付き合った訳では無くただ友達付き合いからの延長線だった。
「じゃあ私、こっちだから。さよなら」
何事もないように告げて自宅に帰った。
その夜に好きな歌い手さんが配信していた。
2時間ほど雑談したりちょっと歌を歌ったり楽しい時間を過ごしていたその時、真剣な声で大切なお知らせがありますと言葉を切った。
「俺たちはこれからそれぞれ、やりたい事に集中する為にグループの活動を休止します。いつ再開するかについてはまだ分かりません。
ですが俺たちを大切に思ってくれているリスナーの為にパワーアップして戻ってくるので待っていてください」
好きな配信者さんの活動休止の知らせ。
話が突然過ぎて頭が追いつかない。なんで?という疑問しかなくてしばらく混乱して固まっていた。
正気に戻って青い鳥を見るとそこには既にトレンド入りしている〇〇グループ活動休止の文字。
ああ…あの言葉って夢じゃなかったんだな。
今日2度目の突然の別れ。
彼氏に告げられた時よりもずっと配信者さんから告げられた言葉の方が衝撃的で簡単に私の感情をぐちゃぐちゃにする。
「君まで…私から離れていかないでよ……っ」
溢れてくる涙を止められない。
私の声は嫌になるくらい静かな部屋の中で響いていた。
テーマ「恋物語」
実ることがない、叶わない恋って聞くと貴方はどんな事を思いますか?
その人を見つけたのはただの偶然。
友人が推してるという歌い手さんのMVを一緒に観たのがキッカケだった。
その人達は顔出ししないスタイルで声でリスナーを喜ばせる歌い手さんだった。
デビュー曲のMVを見て、私は今まで出会ったことない音、世界観に魅了された。
ただその人達をすぐに応援したいかと言われるとそうでも無かった。
ただ友人と買い物していた時に、その人たちのデビューミニアルバムが売られていて収録曲を聴いてみてちょっと興味を持った私は無意識にCDを手に取って会計していた。
その人達の普段の活動場所は勿論、インターネットで配信が主だった。(歌だったりゲーム実況だったり)
今までそういった配信を聞く事が無かった私にとって新鮮だった。
友人に勧められるまま興味本位で見ていたアプリでの配信。
思っていたよりも結構頻繁に配信していて驚いた。それにリスナーの人たちに向けての言葉に最初は聞き流していたのにだんだん配信が楽しみなくらいファンになっていた。
CDの発売や動画投稿してくれる曲を聴いて癒されている毎日。
他の人達には…普段の私を知っている人からは絶対理解されない事ではあると思う。
たまに顔出し配信してくれる事はあるけれどLIVEにも行ったことの無い人達に恋と呼ぶには淡い感情を向けている。
絶対に叶わない恋だと知っている。
自分の存在が認知されず、いつLIVEにも行けるか分からない状態の中、応援している。
実りのない恋だから世界一辛い片思いかもしれない。
ただその人達の1番近くに居られて気持ちを共有出来る。
一人じゃないよと傍に居るよと何度も言ってくれて必要としてくれるからきっとこの恋は世界一幸せな片思いでもある。
それが私の恋物語
お題『真夜中』
「1日の時間の中で好きな時間っていつ?」
と聞かれた時に私は真夜中と答える。
それはとても簡単な理由。
誰の目も気にする必要が無く、好きな事が出来て人前で押さえ込んでいる本当の自分を曝け出せる時間だから。
家族といてもどこか作っている自分がいる。
幼い頃のあるキッカケで出現したもう1人の自分。
それはある意味自分の本性とも言える存在でもっとも傍に居る家族でさえ見せない部分。
それを押し殺さずに居られる時間は貴重で何より安心出来る瞬間でもある。
ただ自分の本性が現れるのはその真夜中の時間だけでは無い。
自分が創り出す作品に1番色濃く現れてしまっているのかもしれない。
周りにいる人間が知っている上辺を剥ぎ取って創りたい物を書いているその作品こそその人の人間性やこだわり、考え方全てが詰まっているから。
例えどれだけ優しい人を演じても創り出す作品にはどんな人間も嘘をつくことはできない。
誰だって本当の自分を偽る事などできはしないのだから。