戸を開いたその瞬間に
鼻を突く雨の匂い
でも、それを気にする暇もなかった
濡れるのが嫌なあの子の為に
傘は家に置いてきた
持ち物はスマホと財布だけ
服は水分をすっかり含んで、少し重い
スマホが水没していないことを祈る
降りしきる雨は
僕のまぶたから落ちる雨も洗い流す
どうかあと数分は止まないでほしい
通る人のいない路地で
みっともない姿を見られずに済んだことに安堵した
お題『降り止まない雨』
何にも囚われずに笑っていた
あの無邪気な頃が懐かしい
眩しい光の中を堂々と走っていた
今の裏びれた生活とは真逆
もう涙さえ出ない
あの頃の私のこころは
一体どこへ行ったのか
隠れてしまっただけなのなら
消えてしまったのでないのなら
もう一度、出てきてください
今の私にはあなたが必要
あのね、わたし知ってるよ
空に吸い込まれたんだよ
見てたもん、知ってるよ
だれも信じてくれないけど、ほんとだよ
空が取ってっちゃったんだよ
あんまりきれいだったから
ほしかったんだろうねえ
ゆるしてあげて、空もうらやましかったんだよ
お題『あの頃の私へ』
好きを重く考えすぎて
嫌われないか心配なの
なのにあなたは気にもしてない
どこからそんな自信が湧くの
私とあなたは正反対で
似たもの同士で真逆で同じ
追いかけられるのは嫌いなの
どうせどこにも行かないから
私はあなたと一緒にいるのに
それすら信じてもらえないの
自分は不安にさせるくせに
私に何にも言わないくせに
それでも今日もふたりの家で
あなたの帰りを待っている
逃げるにはもう、手遅れよ
お題『逃れられない』
バイバイ、じゃあね
またあした
明日があるからまたあした
地球さいごの日になれば
あしたはないね
なんて言うの?
明日になったら今日がきのうで
あしたが今日で
おかしいね
どんどん変わるよ
誰もわからない
お題『また明日』
透明になれたらいいのに。
存在も過去も、何もかもを綺麗さっぱり消して、誰の記憶からも薄れてしまえばいい。
いっそ狂えられれば
狂人と認められてしまえば楽なのに
お前は気狂いだ、生きていては駄目だと
ただそう一言言ってくれれば安堵できるのに
やっぱりそうかと心置きなく死ねるのに
あなたは普通よ、大丈夫
誰でも失敗するんだから
かけられるのは耳触りの良い言葉だけ
私が求めているのはそんな気休めじゃないのに
お願いだから消して
消えたいんだから
誰にも迷惑かけたくないの
お願い
初めから無かったことにして
お題『透明』