晴れは良いわね、お天気の代表みたいで。
お日さまがぴかぴか眩しくって、嫌になるくらい。
こんなに輝かなくたって、誰もあなたの存在を忘れたりなんかしないのに。
日に焼けるからと、あの子は外には出なかった
雪は嫌いよ、音がしなくって。
耳鳴りが、ひどくなるし。
私の呼吸のひとつさえ、雪が吸い取っちゃうんだわ。
雪の日はあの子もシンとして、何の音もしない中、歩いたの。
台風は好きなの、面白いから。
毛布にくるまって、ぴったり寄り添えば、私たち以外誰もいないの
別世界に、飛ばされてるのよ。
その時誰かが笑ってたけど、あの子じゃないわ
雨は嫌よね、猫っ毛がくるくるして。
見ている分には、面白いんだけど。
ほっぺたを膨らませて、唇を尖らす横顔が、何だかとってもおかしくって笑っちゃった。ごめんなさいね
あの子のこころは、お天気みたいに変わるの
明日のあの子は、晴れてるかしら?
お題『今日の心模様』
お前たちにとってあの人は悪だったろうがな、俺にとってのあの人は聖母だったんだ
正義を振りかざす側は楽で良いな
裏で立ち回るドブネズミの事なんか考えずに済むんだ
皆が皆、太陽を望んでいると思うなよ
あの月の、慈しむような光の下でしか息をつけない奴らだっているんだ
それをお前は奪ったんだ
お前が正しかろうが何だろうが、あの人を奪ったことに変わりは無い
自分と違えば全て否定しても良いのか?
お前が善とは誰が決めるんだ?
お前はその善に悪と決め付けられて、素直に死ねるのか?
死ねないだろうな、所詮そんなものだ
あの人は間違っていたか
お前らに取って、悪だったか
だがな、俺はあの人を信仰していたことをこれっぽっちも後悔しちゃいない
それを間違いとされたとしても
たとえ本当に間違いだったとしても
俺はあの人を誇りに思う
お題『たとえ間違いだったとしても』
空にある、あの白いのは何ですか
あれは魚じゃ。魚の群れじゃ。
草々を揺らす、透明は何ですか
あれは鳥じゃ。飛び交う鳥じゃ。
暗い時に空にある、たくさんある、あれは何なのですか
あれはなにでもない。なにでもない。
ではあれ、空から落ちてくるあれは何なのですか
あれは泪じゃ。
誰の泪ですか
ここに生きておる皆の泪じゃ。
なぜ泪が空にあるのですか。我らは下におりますのに
泪を集める象がおってな。その象が、我らの泪を集めて空に行くのじゃ。
象はなぜ空から泪を落とすのですか
象が落としておるのではない。泪のほうで勝手に落ちてくるのじゃ。
集めた泪が無くなって、象は悲しまないのですか
悲しむ脳が、無いんじゃよ。無くなったことにすら気が付かぬ。故に何度も泪を集める。
象は、なぜ脳がないのですか
犬は太陽、虎は月。鳥は風、象は雫。雫に、脳があると思うか?
思いません、けれど、象は可哀想です
なにも可哀想ではない。なにが可哀想なものか。
なぜですか
そういうものじゃ。昔から、そういうものと決まっておるのじゃ。
そうですか、そうですか
さあもうおやすみ。また明日。
朝になったら、空には犬です
お題『雫』
したい事はある?
──ううん。
食べたい物はある?
──ううん。
欲しい物はある?
──ううん。
無欲だね
──違うよ。
じゃあ、何を欲しているの?
──ぼく、ここから出たいよ。おうちに帰りたいよ。ママのごはんがいいもん、パパとキャンプするってやくそくしたもん。無欲じゃないよ。ぼくが何回いってもきいてくれなかっただけじゃないか。ねえ、ここから出して。それ以外は、ぼくいらないよ。
それは駄目だよ。でも、それ以外なら何でもしてあげる。何が欲しいの、言ってみなさい
──このひと、きらいだ。
お題『何もいらない』
もし、未来が見えていたなら。
君と出会った時から、もっと上手く立ち回れていたなら。
君の蛮行を必死で止めて、彼を殺させたりなんかしなかった。
僕は君を許さないし、君は僕を憎むだろう。
そして僕は君を許すことはない。彼女を一人ぼっちにして、悲しませることもない。
ああ、でもきっと、僕はやり直せたとしても君を選んでしまう。彼女を選ぶことなく、君と二人で死んでしまう。
そんなことを考えながら、
暗く深い海の底で、
瞳を閉じた君を眺めて、
その時感じた気持ちが何だかとても気持ち悪くって、
眠った。
お題『もしも未来を見れるなら』