ある日曜日の平和な午後の出来事。
謎の腹痛によりトイレに篭っていた。
この謎の腹痛はいつも突然やってくるのだか、オレは慣れていた。
というのも、一日の中で何度もこの腹痛は起こるので次第に自分のケツの穴がどれぐらいの時間耐えられるのか、耐久性も理解出来る様になった。
よく漏らしてしまった話を聞くが、
オレは日々の鍛錬によりコントロールできる様になっていたのだ。
オレは絶対に失敗はしない。
誰よりも自信があった。
おっと今日は長丁場だとトイレに向かう。
うーん…今日はなかなか…出が悪いな。
ーピンポーン
訪問者だ。邪魔されたくないな。
ーピンポーン
うーん…しつこいな。
ードンドン、ドンドンドンドン!
えっなんだ?なんだ?
急いでパンツをあげる。
クッソ!戦いを中断された気分だ。
はい?
あれ隣の部屋の吉田さん。
ー青木さん!早く、兎に角来て!出て!
???
アレよアレよという間に部屋の外に出される。
吉田さんはオレの隣り部屋の60過ぎのおじさんで奥さんが3年前に出て行ってしまった。
所謂、熟年離婚だ。
まぁ、1人で全部やんなきゃいけないから大変だけどさーもう子供も大きいし、気ままにやってるよー
青木君も独身なんでしょ? まぁ、何か困ったことあったら言ってよー あっ彼女とかさ、夜の方も気にしなくていいからね!オレは女はもういいや〜ガハハハ。
ーこのスケベジジイ。
そうは言っても吉田さんも寂しいのかしょっちゅうゴミ捨て場で他の若奥様達に混じって雑談をしているのを見かけた。
その吉田さんが血相を変え、慌てた様子でオレを部屋から引っ張り出した。
どうしたんすか?
ーこれ見て!!!
目をやると
サボテンだ。サボテンが花を咲かせていた。
ーあいつ(出て行った奥さん)が置いて行ったサボテンが咲いたんだよ!なんかさ、嬉しくなっちゃってさ、誰かに伝えたくてさ!!!どう!!?
いいよね!!
はぁ、いいっすね。
オレは漏らした。
あぁ現実になってしまった。
聞きたかった真実。
でも、現実にしたくなかった。
ようやく矛盾が解けたというのに
兎に角この場から一刻も早く立去りたい。
車の鍵を握りしめ部屋から逃げ出した。
私には受け止めきれなかった。
ドアを開けるとすぐに風が吹き込んできた。
圧倒されつつも、駐車場に向かう。
暗くて良かった。誰にも何も知られたくなかった。
説明する余裕もない。
連日から報道されている台風の接近で
外は風が音を立てて吹き荒れ
雨は横殴りに私の身体を叩く様に濡らした。
車に乗り込むと、急いでエンジンをかけた。
どこに向かうというのだろう。
行く所なんてないのに。
悔しさと絶望が押し寄せてくる。
たまらず、車を発進させる。
進む夜道は激しい雨が周囲をぼやかし
街頭の明かり、信号機のライトが窓に滲んだ。
街路樹がザワザワと揺れる。
対向車のライトの明かりが私を苛立たせる。
帰りたい。
でもどこに?
自問自答を繰り返す。
時計は深夜を過ぎたところだ。
離れたことで落ち着いている自分に気がつく。
喉が渇いた。
蛍光灯の明かりに引き寄せられるように
コンビニの駐車場に車を停めた。
雨は少し落ち着いた様だ。
私以外に停まっている車はいない。
あっメイクぐちゃぐちゃだ。。ひどい。
ルームミラーで自分の状態を見た。
メイクもそうだが色々と気がつく。
バックを置いてきてしまった。。
携帯は…上着のポケットを確かめる。
良かった携帯あった。
画面が光ると着信15件。。LINE未読が2件。。
すぐに画面を閉じた。
これからどうすればいいのか。
どうしたいのか。
考えなければならなかったが
もう暫くこの雨の中佇んでいたかった。