優しさなんて


そんなこと言わないでくれ。

分かってる。
俺のやってる事は、君にとって意味の無い、
……無駄な事なんだろう。


でも、俺は続けたいんだ。

……ダメか？



あぁ。君らしいな。
見返りなんて求めてない。

俺がやりたいからやるんだ。

ただ、君がそのうち笑ってくれたらいいなって。



いやいや、強制してる訳じゃなくて。

いいんだよ。
君は君のままで。

風を感じて


風が頬を切り裂いた。

肉を裂き、血が滴る。


そう感じただけ。

実際には薄皮1枚として切れていない
当然だ。
風にそんな力は無い。


風が私を切り裂く。
痛みが体を突き抜ける。


そうなったらいいのに。


ーー頭おかしいんじゃないの？


そうだね。狂いたいんだ。
そうでもしないと生きられない。


風は髪を巻き上げる。
私にまとわりついた、空気を引き剥がす。



このまま皮を全て剥がしていけばいいものを。

夏

頭がぼーっとする。
だるい。

自分の体の感覚と空気が混ざる。
体感が消える。

思考などない。


早く帰りたい。
早く横になりたい。
早く早く。


それだけを思って前に進む。


家はまだ遠い。