宝物なんていらない
みんなが
どうにか
生きていてくれさえすれば
辛い時を越えて
なんとか生きて
ーーー宝物ーーー
『たくさんの思い出』
むか〜し
まるっこい小さなおじさんが
広い一本道を、丁寧に平らにして
キレイに掃除をしていた。
それに習う様に私もせっせとお手伝いをする。
「こうしてこれから歩く道を整備しておくと
いろんなたくさんの思い出をしまっておくことができるのじゃよ」
まるっこい小さなおじさんは、
夢の中で私にそう教えてくれた。
かの子はクリスマスの歌ばかり歌っている。
かわいいお衣装のクリスマス音楽会が、
とっても楽しかったらしい。
初めての自分たちのだし物も、たくさん練習をして頑張ったのだから、なおさら良い思い出になったのだと思う。
園では、お正月の歌だって豆まきの歌だって、
春の歌だって夏の歌だって、たくさん教えてくれているはずなのに。
「かのちゃん、その歌は冬になったら歌ってね」
かの子は今でもその癖が抜けなくて、
二歳の我が子の子守り歌もクリスマスメドレー。
ーーー冬になったらーーー
かの子が家に入ってくる時は、
ただいま〜
って言って入って来る。
結婚したての頃は、
「ごめんください」とか「お邪魔します」とかだったのに。
私の結婚記念日にゆの子とパパと三人で外食に行った時、かの子が行きたかったといじけた。
ゆの子が、
「かの子はもううちの子じゃ無いからしょうがないじゃない」
って慰めたんだけど…。
その後から
ハッキリ「ただいま」に変わった。
実は、私も結婚したばかりの頃、
自分だけ両親からはなれ離れにされたようで、
非常に悲しかった。
自分の境遇に理不尽を感じていた。
だから
なんとなくかの子の気持ちが分かる。
うちの子じゃないなんて
思ってないからね。
おかえりなさい、かの子。
ーーーはなればなれーーー
二度、子猫と過ごした事がある。
この子を自分がお世話したい、と思った時なんだけど。
小学校の帰り道でまゆこと一緒に貰った子猫。
二人で面倒みようと決心して人から貰った。
ところが最初の一日目から家訓の禁止と言われ私は脱落した。
もう一度は、
一人暮らしを始めた直後。
遠くの両親には知られるはずも無いと安心して子猫を迎えた。
この子は「ココア」と名付け土日にたっぷりゴロゴロして遊んだ。
月曜からは仕事だからココアは留守番になる。
いい子にして待っててね。
…………
帰ってきた時、
寮母に呼び止められた。
動物の鳴き声に心あたりは無いですか?と。
浅はかな自分。
子猫を飼うことはどうしても果たせない夢なんだな、きっと。
ーーー子猫ーーー