「 巡り会えたら。」 / 実話です。
高校一年生の夏、私は彼に一目惚れした。教室で友達と楽しそうに話している彼の姿に、なぜか目が離せなかった。優しい雰囲気と、勉強している時に、時折見せる真剣な表情が胸を打つ。そんな私の想いは、心の奥にそっと閉まっておくつもりだった。誰にも打ち明けられず、ただ彼を遠くから見ているだけで幸せだった。
それから1年後、修学旅行へ沖縄に行くことになった。青く広がる海、透き通った空気、友達と過ごす時間。けれど、私の心はずっと彼を探していた。最終日の夜、浜辺でふと1人になる時間があった。波音が静かに耳を包み、砂浜に足を埋めながら歩いていると、彼が私を見つけて声をかけてきた。
「 この景色、綺麗だね。でも俺、もっと綺麗なもの見つけた。」
彼の言葉に戸惑いながらも、心臓が激しく鼓動を打っているのを感じた。
「 実は、ずっと君のことが気になってたんだ。好きです。俺と付き合ってください。」
その瞬間、夢のような時間が私を包んだ。彼が私を好きでいてくれていたなんて、信じられなかったけれど、心の中ではずっとこの言葉を待っていた。私たちは、その夜から付き合い始めた。
しかし、幸せな日々は長くは続かなかった。私の幼なじみが、彼の事を好きだと知ったのは、それからすぐの事だった。彼女はずっと、私にとって大切な友達だった。けれど、彼女は私が彼と付き合い始めた事を知ると、態度が急に冷たくなった。
最初は無視されるだけだった。けれど、教室で私の席にものを置かれたり、嘘の噂を流されたりされた。私が彼に話せば解決出来るかもしれないと何度も思った。でも、彼女との長い友情が壊れるのが怖かったし、彼に迷惑をかけたくなかった。私はただ、耐えるしかなかった。
耐えられなくなったのは、ある放課後のことだった。私が静かに泣いているのを見つけた彼が心配して駆け寄ってきてくれた。
「 どうしたの?なんかあった?最近元気ないし心配だよ。」
でも、私は言えなかった。彼を巻き込みたくないし、自分の弱さが、彼との関係を蝕んでいる気がしてならなかった。
「 ごめんね。私たちもう別れよう。」
私は彼にそう告げた。彼は驚き、何か言おうとしたけれど、私は振り切って走り去った。両思いなのにどうしても一緒にいられない。それがどれだけ辛いことか、身に染みて感じた。