私は今日、死にたかった。
だから屋上に来た。
けど、出来なかった。
高いところから地面へと落ちていく感覚を、私は知らなかったから。
隣で無惨に砕け散った友人を見て、こうはなりたくないと思ってしまったから。
あの時の友人は、これから死ぬ恐怖に震えたような、そんな顔をしていた。
どうすればいいの?
…って、みんな一度は誰かに聞いたことがあると思う。
その時なんて答えが返ってきたか覚えてる?
私はいつも、自分で考えろって言われてたよ。
けどさ?自分で考えても分からないから聞いてるのに、その答えって冷たいと思うんだ。
冷たいと思うけど、同時に温かいとも思ってしまうんだ。
私の事、ちゃんと考えてくれてるんだなって。
この意味、分かる?
宝物ってすぐ変わるよね。
小さい頃は、その辺で拾った小さい石ころを綺麗にして大事に大事に保管してたけど、
少し大人になったらゴミ扱い。
彼氏が宝物だなんて言う人もいるけど、
そういう人に限ってすぐ別れる。
だから宝物って、本当に大切なものじゃないと宝物って言わないんだなって最近分かってきた。
私の仕事は、人の思い出を消すこと。
今日もたくさんの思い出が空に浮いている。
内容は様々だけど、基本的に悲しい思い出が多い。
みんな悲しい気持ちを忘れるのに必死なんだ。
そう、人間は忙しい。そして大変だ。
だからこそ支えになる”何か”が必要で、ずっとそれを探してる。
けど、ほとんどの人が気付いていない。
人間を支えてくれているのは、たくさんの思い出だということに。
冬になったらクリスマスが来る。
当たり前のことだけど、毎年思うことがあるんだ。
それは、当たり前のことなんてないということだ。
クリスマスケーキを買って、家族みんなで食べること。
サンタさんからプレゼントを貰うこと。
昔は当たり前のように起きた出来事。
今はやろうと思っても出来ないこと。
当たり前のことなんてない。
だからもっと自分を褒めてあげて。