鏡の中の自分に話しかけた。
『あなたは誰?』
鏡の中の自分が言った。
「俺はお前。
…けど、お前に殺された。」
苦しそうに顔を歪ませるあなた。
それにイラッとして、鏡を思い切り殴った。
『仕方ないでしょ!?これが本来の正しい私なの!!
あんたなんて…最初から居なければ良かったのに…!』
「…ごめん」
その日から、あなたは現れなくなった。
眠りにつく前に、私はいつも今日を思い出す。
あの時ああしとけば良かった…なんて、考えてもしょうがないって分かってるのに。
毎日毎日、思い出してしまう。
そして明日が怖くなる。
このまま寝て起きてしまったら、またあの地獄のような場所に行って、偽りだらけの私にならないといけない。
だから朝は嫌いだ。昼も嫌いだ。夕方も嫌いだ。
そして何より、こんなことを考えさせてくる夜が、一番大嫌いだ。
私はこの世界に生まれたくなかった。
ううん、生まれちゃいけなかった。
私は今まで、どれだけの人を傷付けた?
どれだけのものを、簡単に壊した?
蟻の命ですら大切に思えない私が、この世界にいてもいいの…?
ううん、いいわけがない。
だから…お願いです神様。これ以上この世界を汚くしないように、私は消えるから。だから…だから…。
永遠に、生まれ変わりませんように。
誰もいない場所にいきたい。
これ以上、汚い私でいたくない。
だから、優しい雨が降る場所に行って、そっと、誰の目にも触れずに死にたい。
そしたら、次こそは綺麗な私になれると思うから。
…けど、これは私の理想郷。
理想でしかないから…叶わないの。
いつもと同じ景色。
変わらない空気の匂い。
ただ違うのは、それを見ている私。
昔の私は私であって、私じゃない。
背丈はもちろん、見た目も声も考えも、何もかもが違う。
空を見て「きれいだな〜」と笑顔になれていた頃の私はもういない。
「綺麗だな…」とは思えても、なんとなく虚しくなって、自然と涙が溢れる。
昔の自分を懐かしく思うことができるのは成長したから。
良いことだけど、私はそれが怖い。
だから私は、未だに空を見れていない。