神様、どうしてでしょう、どうしてわたしを選んだのでしょう、わたしでなければならない理由は何でしょう、わたしに降りかかる痛みの雨の理由は何でしょう、わたしの身体を見てください、わたしの身体は傷でいっぱいです、右眼は潰れて兎の瞳のよう、服に隠れた部分は痣だらけ、背中を赤く染める火傷は眩しいくらい、理由を教えて、わたしの苦しみに理由をください、理由があればわたしはこの傷を、痛みを、苦しみを、涙を、血を、わたし自身を、あのひとを愛することができるでしょう、どうか、神様、救いなんていらない、むしろ、わたしはいつまでもこの残酷な雨に濡れていたい、あのひとと一つでありたい、ああ、理由だけで、理由だけでいいのです、どうか教えてください、わたしはすべてを愛したいのです、神様
夕方・朝焼けのごとき仄明るい光に照らされたススキの原に立ち尽くす私は一人きり、一人きり、一人きり⋯⋯
ここは宇宙の中に固定されたある一点です、私はその点にうまいこと嵌ってしまった、これは偶然ではなく必然、私は自ら進んでこの運命に嵌りこんだのです、この一点に永久に射止められることを望んだのです、ああ、ススキが私を撫でている、光が私を照らしている、私の感覚は冴え渡っています⋯⋯
脳裏に、あなたと過ごした日々が思い出される⋯⋯
蝿が止まったあなたの左眼を見つめながら
意味がないこと、あなたの髪、あなたの眉、あなたの眼、あなたの鼻、あなたの歯、あなたの舌、あなたの唇、あなたの首、あなたの腕、あなたの手、あなたの指、あなたの爪、あなたの脚、あなたの腰、あなたの血、あなたの骨、あなたの皮膚、あなたの肉、あなたの声、あなたの言葉、あなたの悲鳴、あなたの痛み、あなたの傷痕、あなたのすべて
あなたとわたし、決して消えないものどうし、仲よく抱きあって互いのうなじにつけられた傷痕を舐めあいましょう