【オアシス】

扇風機の壊れそうな音が響く。

ルービックキューブをカチャカチャと回す。

セミの声もよくわからない虫の声も、全部どうでもいい。

小さく聞こえる祖母の声に耳を澄まして相槌を打つ自分が、どうしようもなく二人で、一人じゃないのに寂しくなった。

悲しいじゃなくて、寂しい。

寂しいじゃなくて、哀しい、のかもしれない。

ずっと、いかないで。

【涙の跡】

ほろりと涙をこぼすと、ぬるい粒が落ちる

どす黒い気持ちが全部吐き出されるように

それでも涙が綺麗なのはなぜだろう

こんなに綺麗じゃなくていいのに

なぜかもう憎らしい

【またいつか】

電車に君の姿を探すようになったのは、いつだったか。

「またね」が最後だとは思わないじゃないか。

また隠れて唇を噛みしめた。

生活範囲が似ていたわけではない。

ただ、近くにいてくれたらいいという願いだけで、ずっと視線を揺らす癖を辞められずにいた。

今日も、"やっぱり"見つけられなかった。

【星を追いかけて】

追いかけて追いかけて

追いかけた先に、何があるのだろうか

達成感か、無力感か

いろんな感情が溢れ出して

蛇口をひねったみたいに止まらなくなるのだろう

【揺れる木陰】

二人の影が揺れる。

きらりと星が光る。

風が通り抜ける。

「ごめんね」と声がこぼれる。