【あの日の景色】

何でもない日々。
どうでもいいはずの景色ばかり覚えている。

取り返せると思うのに取り返せない。
ほんとうは一回だけしかなかった瞬間。

無くしてから気づく、なんて真実だったんだと。
果てしない孤独を無くしてから気がついた。

いつも隣にいた人がいない。
いつも目の前にいた人がいない。
尊敬してやまなかった人がいない。
特徴的な笑い声の人がいない。
たわいもない話をできる人がいない。
当たり前のように私に触れてきた人が、いない。

ただただ恐怖だった。

【願い事】

　　　　　　　全
　　　　　　　て
　　　　　　　の
　　　　　　　推
　　　　　　　し
　　　　　　　が
　　　　　　　幸
　　　　　　　せ
　　　　　　　で
　　　　　　　あ
　　　　　　　り
　　　　　　　ま
　　　　　　　す
　　　　　　　よ
　　　　　　　う
　　　　　　　に
　　　　　　　　　　　　　　　

【遠くへ行きたい】

今年の夏にしたいのは、海に行くこと。

眺めているだけで気持ちが軽くなる海。

感動して、泣きそうになった。

こんなに綺麗なところだったら、この中で塵になれたら、それは救いなのだろうなと。

躊躇いもなくそう思って、飛び込もうとする足を止めるのに必死だった。

【夏の匂い】

日焼け止めの匂い。

制汗剤の匂い。

汗ふきシートの匂い。

ドライシャンプーの匂い。

それと、汗の匂い。

それらが全部混ざり合う更衣室の匂いは最悪だ。

【カーテン】

目の前でカーテンが閉められる。

思考を停止するように
通信を遮断するように。

「開けて」と「助けて」と叫んでも
開けられることはなかった。

孤独に突き落とされるのがこんなにもつらいのかと
ぞっとする。

どんどん酸素が薄くなる。

ふっと眠るみたいに意識が途絶えた。