【すれ違う瞳】
何を考えているのか、わからなかった。
一番近くにいるはずなのに。
物理的には近くにいるつもりだけど、心理的には近づくことすらできなかった。
だんだん気持ちがすれ違っていることに気づいた。
気づきたくなかった。
それでも、別れを切り出されるのが怖くて。
じんわりと避けるようになった。
隣にいるはずなのに、別の方向を向いている。
別れかけのカップルみたいだな、と自嘲した。
【青い青い】
青い空を眺める。
どこまでも続いてる"はずの"青空。
どこまでも見えるわけじゃない。
きっと見たいところまでしか、私たちは見ていないわけで。
都合のいいところだけ切り取って。
同じ"はずの"この青空の下でどんな生活をしているかなんて、気にしているようで気にしている余裕もない。
自分の周りの世界しか目を向ける暇もない。
それでも、何があっても、変わらずにいてくれてありがとうと思う。
ずっと青い空に。
変わらないものがあるだけで、安心するって。
【風と】
下り坂を自転車で駆け下りていると、
風と一体化したような気持ちになる。
朝の澄んだ空気が身体をすり抜ける。
まだ少し肌寒くて、制服の袖を握りしめた。
ふわりと春の匂いがした。
【軌跡】
振り返らないと見えない軌跡。
自分の過去なんて、振り返りたくもないものばかりで。
嫌悪感が募る。
前も見えなくなるような。
現在からは目をそらしたくなって。
でも後ろも振り返りたくない。
身勝手な自分のことが嫌になる。
【好きになれない、嫌いになれない】
一年間、嫌悪感を抱き続けた人がいた。
今思えば、自分が時代についていけていなかった。
それと、うらやましかったのだと思う。
努力してないような顔をして、
誰よりも成功してしまう彼のことが。
それが好感に変わったのは、ほんとうにささいなきっかけだった。
娯楽を求めてタップしていた動画。
それを一年間見つけられなかった自分が悔しかった。
意地を張っていなければよかったと思った。
今では、ほんとうに大事な存在だ。