【一筋の光】
変わらない日々に嫌気が差す。
毎日学校へ行って、ただ授業を受けて帰る。
話す友達もいないし、一生懸命になれる部活もない。
青春も人生も無駄にするのだと思っていた。
どんよりした今にも雨が降りそうな空のようだった。
何気なくスクロールしていたスマホの画面。
あるクリエイターさんの動画を見た瞬間、一筋の光が差した。
短い時間で人の心を掴み、記憶に残る。
明るい口調と表情の裏には、きっと血の滲むような努力がある。
そのことに気づいて息が止まりそうになった。
人生を無駄にしている場合じゃない。
この人みたいになりたい。
暖かい布団を抜け出して、明るく電気をつける。
勉強机の上を綺麗にして、教科書を広げる。
シャーペンを持って手を動かせば、
見えない未来に向かって手を伸ばし始めた。
fin.
【哀愁を誘う】
哀愁を誘うもの
地平線に沈む夕日
ツタに覆われた廃屋
稲刈りが終わった田
過去の教科書とノート
先輩を追いかける新人
過ぎていく季節
真っ赤に咲く彼岸花
風に揺れるカーテン
お揃いで買ったキーホルダー
祖父が語る戦争の記憶
大好きな人の視線の先
葉が落ちた桜の木
【鏡の中の自分】
鏡の中の私は、笑っていた。
鏡のこちら側で泣いている私を嘲笑うように。
人を下に見ることでしか優位に立てない可哀想な笑み。
しばらく見つめていると、ゆっくり唇が動く。
"消えちゃえばいいのに"
鏡の中の私は、泣いていた。
鏡のこちら側で笑っている私を憐れむように。
悲劇のヒロインぶっただけの涙。
気持ち悪い視線を向けてくるから、口パクで伝える。
"消えちゃえばいいのに"
「消えちゃえばいいのに。私なんか」
fin.
【眠りにつく前に】
眠りにつく前に思う。
明日は、今日よりもっといい日に
なったらいいなって。
【永遠に】
永遠、なんてないと思う。
私が中学校の3年間を捧げたアイドルたちは、目にも止まらないスピードで辞めていった。
大好きな人がいなくなる感覚。
別の道に進む彼らを応援する気持ちはあっても、素直に「いってらっしゃい」は言えなかった。
帰ってこない「いってらっしゃい」なんて、悲しすぎる。
でも、「おかえり」を言う私たちを残してくれているのが明日デビュー日を迎える彼らだ。
この数年間、私は待つのが得意になった。
帰ってきてくれるのがわかりきっているから。
痛いだけのオタクかもしれないが、信じている。
信じて、「おかえり」を言うことだけが使命だと思う。
fin.