シンビジウム

Open App
10/29/2024, 1:14:28 PM

【もう一つの物語】

たまに、ぼんやり考える。

女じゃなくて、男として生まれて。
長女じゃなくて、末っ子として生まれて。
本だけじゃなくて、ゲームも与えられて。
田舎じゃなくて、都会に住んでいて。
塾に通うんじゃなくて、外で楽しく遊んで。
三次元じゃなくて、二次元を好きになって。
美術部じゃなくて、テニス部に入って。
国語じゃなくて、数学が得意で。
隅っこじゃなくて、中心にいて。
図書館じゃなくて、カフェに行って。
彼女じゃなくて、彼氏ができて。 
         ︙

たまに、ぼんやり考える。
別の生き方もあったのかもなって。
たった一つ、違うだけで。
無数の道が繋がってるんだ。
                       fin.

10/29/2024, 8:21:19 AM

【暗がりの中で】

いくらリストカットやODを繰り返しても、消えない気持ち。
病み曲に共感しても、変わらない気持ち。
声を殺して涙を流しても、溢れる気持ち。
間違っているとわかりきっていても、止まらない。
きっと当てはまる言葉なんてない、言いようのない不安。
自分が何者か、ぼんやりともやがかかる。

そんな夜を乗り越えると、いつも通りの朝が広がっていた。
はしゃいだ小学生の声。
炊きたてのお米とみそ汁のにおい。
急かすような踏切の音。
カーテンの端からこぼれる朝日が明るい。
大丈夫、と小さくつぶやく。
リストカットの跡がじんじん痛んでも、不安は薄らいでいた。
制服に袖を通して、顔を洗う。
リビングのドアを開けると、
「おはよう」
いつもの声が聞こえた。
                       fin.

10/27/2024, 10:51:13 PM

【紅茶の香り】
 
紅茶は、大人の飲み物だと教えられた。
独特の香り、透明感のある薄茶色。
どれをとっても、僕がいつも飲んでいる麦茶とは違っていた。
大人になってからね。
母が飲む紅茶をこっそり飲もうとすると、母は決まってそう言った。
僕も、早く大人になりたいと思った。
                       fin.

10/26/2024, 10:58:17 PM

【愛言葉】

スマホのロックを外すときは、6桁の数字を入力する。

どの数字だったっけと思う間もなく、指が勝手に動く。

今の数字は、恋人の名前を数字に直したもの。

これが、私とスマホの"愛言葉"。
                       fin.

10/25/2024, 12:32:57 PM







【友達】

 友達か? 問いかけられる 焦燥感 
        既読をつけたら 返さなきゃだめ?

既読をつけたら、すぐ返さなきゃって気持ちになると思います。でも、すぐ返さなきゃいけないんですかね?すぐ返す人=いい人って思ってません?すぐ返すかどうかで人の価値を決めているような、そんな空気を感じるときがあります。相手だって、後悔しない言葉を選んでいるだけかもしれません。あなたを傷つけないために。そう思ったら、待つのも苦じゃないでしょ?

Next