12/18/2024, 9:05:37 AM
陛下とお会いするとき、私たち側室は常に厳格な言葉遣いを求められる。
話の内容もそうだ。世の政はどうか、体調はどうか、夜伽はできるか等。
たわいもないことに聞こえるだろうが、本当に大事なことなのだ。
そんな側室だが、気軽に話せる相手はいた。
そう、付きの女官だ。
私の付き人は雪梅といい、天真爛漫な子だ。
「…今日は天気がいいわね」
「そうですね、葉青様。この天気なら洗濯物がすぐ乾きそうです」
「あらそう?じゃあ明日にはお気に入りの唐衣が着れそうね」
「葉青様のあのお姿……はぁ…考えただけでクラクラします」
「大袈裟ねえ」
今日の空は青く、日差しが強い。そのため陛下も後宮には来ようとなさらない。
だから今日は、雪梅ととりとめもない話が、長くできそうだ。
それはこの波乱に満ちた後宮では、幸せなことだった。
『とりとめもない話』
12/16/2024, 2:30:17 AM
「白き雪となり、君のもとに帰ってくる」
赤い封筒を握りしめた夫の言葉は、未だ耳にはり付いている。
空を見上げれば、広く暗い空。
いつになったら雪は降るのだろう。
いつになったらあの人は帰ってくるのだろう。
私は今日も、灰色の空を見上げながら夫の帰りを待つ。
一粒の雪と、空が青く澄み渡ることを、願いながら。
『雪を待つ』