「お、久しぶり。元気してんの?」
笑った写真を見ながら、仏壇に手を合わせながら、彼女がそう笑う。元気も何もねぇだろ、と咄嗟に思いはしたけれどあまりに普通に声をかけるものだから、自分も元気も何もねぇあの人が今日も元気でいてくれればいいなと頭の片隅で思ってしまった。
「冬の私って可愛くない?」
ちょっと赤らんだ鼻とか、冷たいすんとした空気のせいか少しきらめく睫毛とか、かわいいと思うんだけど。服も冬の方が似合う気がするし。
そう訊ねれば、親友は少しううんと唸ってにぱっと笑った。
「春も夏も秋もずっとかわいかったと思う」
どん、と勢いをつけて抱き着いた。
「私そんなことまで頼まれるほどの給料もらってないですけど」
そう素直に言えればいいのに、大人なので今日もいいですよ、と愛想よく笑うだけ。社会人ってそんな感じ。
"何でもないフリ"
「好きです、付き合ってください!」
「ありがとう、私も好きよ。でも、もうちょっとない?」
「もうちょっと!?え、あ、君の信念が強そうなところが、すごく好きです!」
「いいわね!からの?」
「からの!?あ、あー…校則を守ってスカートを折らないまっすぐさも素敵だと思ってました!」
「まだ行ける!」
「まだ!?え、あの、あ!いつも校則を守るのに、下校した時コンビニで肉まん買って一緒に食べてくれて、本当に、一生の思い出になると、思いました!」
「もう一声!」
「もう一声!?えと、う、あ、あの!あの時みたいに、僕のこれからの思い出にも、君がずっといてほしいと思います!だから、だから、あの!」
「…」
「本当に大好きです!僕と、付き合ってください!!」
「…」
「…」
「…」
「…あの…それで…?」
「それで?そうね…ふふ、ふふふふ!勿論、こちらこそよろしくお願いします」
「寒いなら俺のポケットに手、入れてもいいけど」
「…新手のセクハラ?」
突然どうした、と戸惑って返せば少しの間のあと「ばーか!」と大きな声が返ってきた。
(後から聞けばバンプのスノースマイルがやりたかったらしい。)
"手を繋いで"