はぁー…
好きだ惚れた愛してるで付き合った
"愛しい彼氏"くん
口喧嘩しないでいられる世界が
すぐそこに転がってたらいいのにな〜
#理想郷
「好きです」
初めて告白した日は台風の日だった
ゴオゴオと唸る強風のなか
一緒に信号待ちしてたチャンスを
見逃したくなくて
「え、何?聞こえないよー!」
豪雨にびしょ濡れになって
雷も鳴るなんてバッドタイミングだったけど
「大好きなんだー!」
2回目の告白は大絶叫
驚いて振り向いた彼女は傘を投げ捨てた
「知ってるよ」
暴風雨に負けないようにって
僕に抱きついてくれたんだ
そうだったよね?
僕の…愛しい花嫁さん?
#懐かしく思うこと
恋を知らない生き方をしていたら
どんな世界が
見えていたのだろうね
涙を知らない一生を
まっしぐらに淡々と歩いていた
そんな景色かな
何にしても
つまらない物語になっていたと思うよ
#もう一つの物語
暗がりの中で天使と悪魔が喧嘩する
「んもう!明日から頑張るんだぞ?」
頬を膨らませて譲歩したのは天使だった
わたしは「ちょっとだけよぅ♡」と言いながら
深夜の冷蔵庫からプリンを取り出した
ダイエットの天敵は
気持ちを明るくさせる天使なんだよね
#暗がりの中で
幼い頃、アールグレイの紅茶が苦手だった
鼻にスッと入ってくるような無遠慮な香りが
好ましく思えなかったんだ
「お洒落で落ち着く香りね」
レトロなカフェ
二人掛けのテーブル席にパンケーキと紅茶が並んでいた
揺蕩うのはアールグレイの香
彼女の好みだった
「そうだね」
相槌を打ちながらティーカップに口を付ける
"ベルガモット"
気持ちを穏やかにする原料なんだそうだ
好きになったのはいつからだ?
ふと考えて
彼女とファーストキスをした日を思い出した
-2nd story-
紅茶の香りが
スコーンを作りたいと思わせたのかな
それとも?
スコーンが食べたい!て思わせた食欲の秋が
紅茶を淹れさせたのかな
「あ〜美味し♡」
面前の愛しいひとがクスクス笑っている
#紅茶の香り