始まりはいつも本
ワクワクしたりドキドキしたことも
物語や登場人物に、恋したり憧れたことも
図書室で
ひとり読書をする男の子に
"好き"を抱いたことも
描かれる文章に栞を挟んで
ゆっくりとゆっくりと想いを乗せながら
読み進めていく
いつかのエピローグを
想像して
#始まりはいつも
一ヶ月前の自分に話し掛けたい
「ほら、勇気出せ!今じゃないと終わる」
いつ気持ちを打ち明けようかと
きみを見ては
悩んで悩んで苦しんで
ふと向けられる笑顔に恋心が揺れていた
大好きなきみが
大好きだったきみに変わる
僕の知らない男性(ひと)と
手を繋いで歩いてる姿はとても幸せそうで
その笑顔が
溢れる涙でもう見られない
#すれ違い
紅葉間近の街路樹と
「遅くなってごめん!」
息を切らせながら走って来た彼女の秋服が
秋晴れに心地よく映えて
「ちょっと冷たいけれど美味しいね」
お揃いのフラペチーノと
一緒に季節を重ねる幸せが
身体に優しく溶ける
そんな休日のデートに
自然と恋が実り、愛が育まれていく
#秋晴れ
階段を上っている時に強風が吹いた
ヒラッと前を行く女の子のスカートが捲られ
パステルカラーのピンク色が、ふわり
見えてしまった…(赤面)
運命なのか偶然なのか
その女の子は今、僕の彼女
「ね!わたしの好きな色、わかる?」
ショッピングモールで振られた会話にドキッとする
「あー。たぶん水色かな?」
正直に"パステルカラーのピンク色"だなんて
付き合い始めてまだ一か月
度胸もないし、言えるわけもない
#忘れたくても忘れられない
やわらかな光が降り注ぐ場所には
陽だまりのような優しさが集まっている
学生の頃
座ってたのは窓際の席が多くて
晴れている日はやわらかな光が差し込んでた
居眠りばかりしててさ
「コラッ起きろー!」
よくそう言って
教科書で叩いてきた先生がいた
22時過ぎに帰宅
先生の訃報がポストに届いていた
「なんだよ。今度は先生が眠ってんの?」
あのさ先生…
報告が遅くなっちゃったけど
俺も今、生徒達を叱咤激励する『先生』なんだよ
#やわらかな光