さよならを言う前に
「一杯飲んでからにしようぜ」
そう言ってグラスに酒を注いだのは
言い訳だった
「ありがとうな」
ああ、やっぱりだ…
今までの感謝を言葉にしたら
涙が抑えきれなくなってしまったよ
あの世に着いたら
美味い酒と摘みでも探しておいてくれ
話は俺が用意する
またいつか、一緒に馬鹿笑いしよう
#さよならを言う前に
曇りのち晴れ?
晴れのち雨?
実は全力で曇り!?
空模様は50%の確率を出している
彼女は天気アプリを難しい顔で見つめながら
「んー。晴れたらこれ、雨ならこうか!?」
1ヶ月前から決めていたデート予定を
50%の天気に合わせて楽しそうに組み直していた
#空模様
彼女を誘惑したアイツが許せない
だが悔しい!!
鏡に映る俺はアイツと比べると月とスッポン
がっくり…
デートよりイベントを優先されてしまった…(涙)
アイツには隙がない
俺には隙だらけ
あぁ、どうしたら!
どうしたら…
彼女を『ツイステ』から『現実』に召喚して
俺を目に映してもらえる?
「はぁ〜。格好良くなりてぇよ…」
#鏡
鞄を落としてしまった時に
教科書が入れ替わってしまったのは偶然
その相手が"気になる"と"好き"で揺れていた
男の子だったのも偶然
『問① 好きと大好きの違いは何でしょうか?』
教科書の1ページ目に
『正解、俺から君への気持ち』
教科書の2ページ目に
翌日に「ごめん」と言いながら
返し合った教科書には小さな付箋
端に手書きで"問題と答え"が添えられていた
「ごめんじゃなくて、ありがとうだった!」
"いつまでも捨てられないもの"
それは、教科書の小さな付箋と端っこのラブレター
眼前の鉄板上に、ジリジリと焼けるお好み焼き
ひっくり返すタイミングは
今か今かと迫っていた
4人の会社員は固まっている
「おい。誰がやるよ?ここでの失敗は手痛いな」
ゴクッと息を飲む
新人社員の僕の出番か?恐る恐る手を挙げた
自信なんてミリ単位だ
ヘラ(コテ)を握る手には汗もジットリと握る
「ええい!やったらぁー!」
覚悟とお好み焼きが宙を舞った
華麗に翻り、鉄板に落ちゆく様はスローモーション
「勇気がすげぇよ、新人!」
3人からの拍手が沸き起こったとき
僕は"誇らしさ"に満たされ、椅子からずり落ちた