ハイビスカスは派手なイメージの花だけど
花言葉は『繊細な美』
真っ赤な口紅を指でなぞり、鏡を見る。
舞台の上に立つ僕は
二人の兄に恋をして二人の兄に愛される令嬢だ。
「スタンバイお願いします」
ハイビスカスは理想の華。
ドレスをふわりと揺らし、スタッフの声に艶然と頷いた。
#繊細な花
「驚け。俺の余命は1年あるかないかだってさ」
親友が何でもないような顔をして告知したのは昨日。
ばっかだなぁ。
誰も1年先の事なんてわからないんだぞ?
交通事故に遭って何本あるかわからない点滴に繋がれ
動かない身体で天井を見上げる。
途切れ途切れの意識の中で
『僕の方が天国に近そうなんだけど…』
親友に言い返してやった。ほら驚いたでしょ。
#1年後
芝生の上にゴロンと寝転がることを
「ちょっと恥ずかしいかな」て一瞬躊躇したとき、
窮屈な時間に慣れ過ぎたもんだと
自嘲する笑みが溢れた。
子供の頃は
草だらけになって、青空見上げて、
時間をを忘れるくらい無邪気に笑っていたのにね。
「痛ってぇぇぇ!」
喧嘩っ早いし、がさつだし、運動バカだから
小さな頃から怪我は日常茶飯だった。
「仕方ない奴だなぁ」
ケラケラ笑いながら絆創膏を貼るお前は
俺の日常に欠かせない存在だった。
それを今更だ。
高校生になって、やっと気付いて、
お前が彼氏を紹介してくれた瞬間に
絆創膏でも塞げない大怪我をしてしまった。
仕方ない奴だって、笑えるだろ?
…泣きたい。
親指を通して持つパレットは、
様々な色が混ざり合っていて常に混沌としている。
既存の美しい色など存在しないし、
必要でもない。
それでも
絵筆で描いたスケッチブックの一枚一枚は
僕の世界そのもので、
描いた絵は、どれも色褪せたりしない。
好き好んで選んだ色は
その時々、自由自在に揺れ動いた感情と同じ色。
美しいとは言えないけれど、
後悔しない色になったと今でも思っている。