ひとひら


一枚の桜が舞ったときにあなたは大はしゃぎでその桜を取ろうとぴょんぴょんとウサギのように跳ねてた時は少し笑ってしまった。あなたが取れたと大喜びで私に見せてきた時もまた笑みが零れた。あなたはそれを大切に保管しているよね。でも桜って段々枯れてきちゃうのを知らなかったみたい。しおしおになっちゃってあなたは悲しそうにその桜を埋めたの。もしかしたら桜の木が出来るかもって。できるわけないじゃないと思ったけどあなたが死んだ数年後に小さな桜の木が出来たよ

元気かな



久しぶり！
もう何年も前だけど元気だったら嬉しいな
君が引っ越してからクラスはみんな悲しげです。みんな君がいなくなった事を悲しんでるよ
顔を出せそうなら出してね！みんな喜んで歓迎するから！




そんな手紙が送られてきた。
私は直ぐに捨てた。クラスぐるみで私を虐めてきた異常者の言うことにもう従いたくない

遠い約束


昔おばぁちゃんが言っていた。好きな人と約束をしたと、戦争が終わったら結婚しようと。その人は戦争で亡くなってしまったらしいけどそれでもおばぁちゃんは独身を貫いてその好きな人との子供、僕のお父さんを頑張って育てたんだと。僕は子供ながらにおばぁちゃんはすごいなと思った。そんなおばぁちゃんもついには寿命で亡くなってしまったが死に際はとても穏やかに笑っていた。僕も何十年後に寿命を迎えたらそっちに行くからその時にはおじぃちゃん紹介してね

フラワー


花が好きな貴婦人がいた。
特に椿を好んだ。彼女は椿をモチーフにしたドレスを作ったり椿で髪飾りを作ったりと椿に対してとても愛着を持っていた。そんな貴婦人が椿に埋もれて死んでいたというニュースが流れてくる。貴婦人はとても幸せそうに眠る様に死んでいたとか。死ぬまで椿に愛着を持っていたなんてと皆驚いているがきっと貴婦人が椿に異常なほど愛着を持っていたのは貴婦人の娘が気に入っていた花だからだろう。だから椿に囲まれて死んでいった貴婦人はきっと天国で娘と再開したのだろう

新しい地図


未開の地が発見された。
絶滅危惧種が沢山生存して植物も豊かに育っておりまるでエデンの様だと世間では言われている。
私はその未開の地を地図に記す為に足を踏み入れた。けれどそこは人が踏み入ってはいけなかった。人が踏み入れる度に植物は伐採され動物は保護と名目で連れて行かれていった。新しい地図が出来た頃には今の世界にふさわしい姿になっていた。