よく食べてるお菓子。
使ってるシャーペン。
タイトルだけ知ってる知らない漫画。
フレーズだけ知ってるタイトルの知らない曲。
カバンについてるキャラが出てくるゲーム。
きみが好きなものを好きになるからさ、
わたしだけの世界にいて
[恋物語]
水道の蛇口をひねり、水の流れを止めた。指先から雫がぱたぱたと落ちる。
哺乳瓶を消毒ケースの中に入れ、電子レンジへ。500wを5分に設定してボタンを押す。オレンジの光に包まれるケースを見送れば、今日の任務は終わりだ。
気づくといつも日付を超えて2時間が経っている。明かりの消えたリビングでは、飼っているうさぎが耳を少しだけアンテナのように立たせながら、餅のように丸く伏せていた。どうやら寝ているようだ。私はそっとリビングの戸を閉めた。
子どもを出産してからは、なるべく一緒に寝るようにしていた。夜泣きや夜間の授乳もなく、手がかからない子でとても助かっている。
そっと扉を開ければ、常夜灯の薄ぼんやりとした中にころりと寝そべる小さな影が見えた。今日は私の布団の上らしい、丸まった背中をふっくりふっくり動かしていた。
昨日はベビー布団と壁のはざまにいたし、また別の日は私の布団とベビー布団を横断して寝ていたし、赤ん坊の寝相はずいぶん自由だ。毎日寝かしつけの時はベビー布団に仰向けて寝かせてから掛け布団をしている。にもかかわらず、私が家事を終える時間になると、当初とは向きが180度回転して伏せながら熟睡している。
私はうつ伏せになっている子の胸元と足の付け根に手を滑り込ませ、最短の動作で元の位置に戻す。仰向けにさせられた子どもは、若干ぴくりと肩を動かすが変わらず寝入っている。起こさずに済んでほっとした。
子どもの寝跡がついた布団のくぼみに手を置く。手のひらに、生きている命のあたたかさを感じた。
4時間もすれば、元気にずりずりと這いながら私を起こしにくるのだろう。笑顔が朝を連れてくるのを目蓋に浮かべながら、私もゆっくりと眠りについた。
[真夜中]