3/17/2024, 11:11:53 AM
お題 泣かないよ
幼少期から私はよく泣いていた。今思えばそれは、泣ける環境にいたからだったのだろう。
バイト帰りの路地裏で、しゃがみこむ彼を見つけた。思わず駆け寄って声をかけた私に、彼は目を見開きながらもその必死さに少し笑った。
「…泣いてもいいんだよ。」
少し話してそう呟いた私。彼は先程から黙っている。今の言葉がまずかったか、となんてどう挽回するか考える私をよそに彼は立ち上がる。
『何してんだ。早く帰るぞ。』
歩き出す彼の背中を追う。
『…泣かねぇよ。』
そんな彼がこぼした言葉も拾わずに。