七夕
毎日誰かの誕生日だけど
今日はあの子の誕生日だ
もう顔も名前も覚えていないのに
覚えているのは七夕だったせいだろうか
かろうじて旧姓は覚えている
私たちのクラスには名字がかわる子が
本当にたくさんいたから困っちゃうね
自分の記憶力が少し気持ち悪いけど
君が今年も楽しく過ごせるよう願ってる
友だちの思い出
数人で遊びにでかけたあと
自分自身の映りの良さだけで
SNSにあげる写真を選ぶ人も多いけど
人の可愛い瞬間を逃さなかったり
おんなじテンションで撮れたものを大切にしたり
一緒にいることを楽しんでくれたんだなと
嬉しくなるくらい伝えてくれる
そんなあの子に出会えて本当に幸せだと思う
私は何ができるかな
星空
天文学に興味を持てない理由ははっきりしている。
空に現れる不思議で綺麗なものたちは
何度も私の両親をさらっていく憎い奴らだ。
母親は、空を見るのが好きだった。
いつもと違う景色が見えると少女のように喜ぶ。
料理の途中にも関わらず
窓の外に虹を見つけては家を飛び出し
キャンプに行けば星空を指差し
酔っぱらいのようにフラフラとどこかに消える。
父親はそんな母が大好きで嬉しそうについていく。
吹きこぼれそうになった鍋の火を止めるのも
両親を探してぐずる弟をなだめるのも
もうたくさんだ。
天文学の範囲は狭いから諦めて
三学期巻き返そうと思う。
神様だけが知っている
今年も七夕の短冊に
たくさんの願いが書かれていく
痩せますように
太りますように
会社が大きくなりますように
会社を辞められますように
長生きできますように
早く死にたい
ちっぽけな人間たちの
小さなお願い事をつまみにして
神様はお酒でも飲んでいるかもしれない
かわいい奴らめと微笑んでくれたら
もうちょっと頑張れる気がする
この道の先に
この道の先に一体何があるというのか
褒美も誇りもなく
ただ飯を食うためだけに
山道を進んでいるのが馬鹿らしくて
よそ見をしていたら崖から落ちてしまった
谷底の道は平坦で山道より歩きやすいが
日が差し込まないので実りもなく退屈だ
山道に戻るよりもっと難しいけれど
私は原っぱに行きたいなあ
苦労するのが後か先か
きっとそれだけなんだ