大事にしたい
私の子どもの頃の夢は
幸せになりたい だった
幸せの定義も分からないまま
とても抽象的な
幸せだ と感じられたのは
夫と結婚してから
結婚する前は喧嘩ばかりして
正直モチベーションも低かったのに
一緒の家で暮らすようになって
毎日がとても満たされるようになった
自分の価値は性的なものしかないと思って
付き合った男性が
自分に手を出さずに眠ってしまうと
ずっと泣いていた
そんな私が
そういった行為がなくても
私の内面と 存在を
まるごと愛してくれて
肯定してもらえる
それも心から尊敬する人に
自分が尊敬する人に
認めてもらえること以上に
幸せなことは あるのかな
どんなに嫌なことがあっても
自分には価値があるように思えた
あの気持ち
もう味わえない気持ち
大事
大事にしたい
大事にしたかった
夫を
もっと大事にしなければいけなかったのに
ごめんね
君からのLINE
初めてのLINEは何だっだろうか
2014年の12月
消さなければよかった
衝動的な私は
嫌なことがあると
履歴を消してしまう癖がある
残っているのは2015年の6月末から
その日が分岐点
2人が付き合って結婚する分岐点
ただ確か
転勤する前に時間を作ってくれて
私のいるところまで来てくれたのに
泊まらずに帰ってしまって
すごくショックだったんだよね
もういいです、っていう私に
「勝手に諦めない」
で始まるLINEの履歴
私のこの
頑なで傷つけられたくない
自己愛の塊の扉を
トントン
ノックしてくれたんだよね
当時のLINEのやりとりは
お互い苗字にさん付けで
その名前を呼んでくれる人は
今も沢山いるのに
私の夫とお揃いの苗字を
呼んでくれるのは病院くらい
夫だけが呼んでくれた
私の名前
もう誰も呼んでくれない
命が燃え尽きるまで
なんて残酷なお題
このお題を考えた人は きっと
大切な人の 命が燃え尽きたところを
目の当たりにしたことがないのだろう
夫の命が燃え尽きたとき
会社のトイレで
据わって
恐かった?
痛かった?
苦しかった?
携帯で調べるくらいなら
救急車を呼びなさい
でもきっと
死ぬなんて思わないよね
少しでも苦しくないように
もし苦しくても一瞬であるように
神様
この世に大罪を犯した人はいます
もっと不健康な人もいます
でもチャンスを与えられ
生きている人は たくさんいます
夜明け前
昨晩1時に寝たのに
4時過ぎに目が覚めた
飲みすぎたかな
夫がくれた最後から二番目のプレゼントの
プラネタリウムが
部屋の天井に大きな鯨を映す
寂しくて
寂しくて
寂しくて溶けて消えてしまえばいいのに
寝られないと送ったLINEに
既読がつくことはなく
寝ないと仕事に支障が出るから
早く目を閉じたいのに
仕事のことを考えて眠れなくなる
涙が止まらなくて
もう限界ですと
課長に伝えようか頭をよぎる
仕事は辛くない
ただ何のために頑張るのか
生活のために稼ぐ
夫と出会わせてくれた会社への恩返し
なんの予定もない週末
会いたい人も
やりたいことも
楽しみも
何も無い
夫がいない事実だけが存在する
残業して家族の待つ家に帰る人が
羨ましくて
仕方がない
涙が止まらない
気づいたら夜明け前は
朝7時になっていた
また明けない夜の続きが始まる