あっという間だった。
放物線を描いて重力に従って
落ちていく。
果敢に手を伸ばすも虚しく空を切り、
フローリングには
見るも無惨な有り様が展開された。
さようなら私のお昼ご飯…
花が咲いている、
青い小ぶりな花が見渡す限りに広がっている。
ここは何処だろうか
空を見上げれば青みがかった白い雲に覆われている。
曇っているようだが何故か晴天の下のような明るさがある。
足元に何かが触れて見てみればそこには猫がいた。
マーキングするようにすりすりと顔を己のスラックスに擦り付け体毛が静電気によってへばり付く。
思わずしゃがみこんで頭を撫でてやれば足元で転がる。
花を潰しながらごろごろするのをあーあとか言いながら撫でているといつの間にか十匹ほどの色んな猫に囲まれている。
若干の恐怖を覚えたものの特に害は無く、ただ得体の知れない花畑にただの猫が沢山居るだけだ。
一体ここはなんなのかと思って周りに居た猫達を撫で回して転がしていれば少し離れた場所に木製の看板が立っていた。
猫達を避けて近寄ってみれば
【疲れた猫好きの人間用待機所】と書かれており
待機所????と首を傾げて居ると
ピンポンパンポーン
と謎のチャイムが空間に鳴り響く。
《来世の準備が出来ましたのでエントランスまで転送します》
来世?エントランス?とか思う間もなく気がつくと猫も花畑もなく真っ白い待ち合い室みたいな場所に立っていた。
柔和な笑みの人が来て受付の椅子に座らされて
死因とか来世の手続きみたいな話をされて、
そういや俺死んだんだっけとか来世も人間かよとか思うことは色々あったが言いたい事はただ一つ
「戻して、もう来世とか良いから!さっきの楽園に!!」
猫には九つの命があるという
それが本当だとするならば
もう君と出会えなくても
何処かで誰かに大切にされているなら
それで良いんだ
君の眠る場所に植えた桜は今年も綺麗に咲いてるよ
無くさないように大事に大事に
しまい込んで
いつの間にか無くしてしまった
ふと思い出して探しているのだが
出てこない
確か何か箱に入れた筈なんだ
鍵がついた木製の箱だ
そんなに小さい物じゃないのに
全然姿形も見当たらない
昔から大事にしたいと思ったものを
何かに入れてしまうのだが入れ物ごと
見失ってしまうのだ
木の実を埋めて忘れる栗鼠みたいに
「うっそでーーーーーーす!エイプリルフールだよ!お前見事に騙されてやんの!うそうそ!今のは嘘なんだよなぁ!ははは!その顔ウケんね!あっ怒った?!ごめんて!あははは!、」
我ながら情けない
嘘にして茶化さないと
お前に想いを伝えられない臆病者なんだ