NoName

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5/6/2023, 1:51:36 PM

明日世界がなくなるとしたら、何を願おう、
そんなことを考えながら家へ近づくにつれて足取りは重くなる。
「ただいま」
酔いつぶれつ寝ている母を起こさないよう、散らかった缶ビールを避けながら歩いて部屋へ向かう。
__カラン
あ、やってしまった
ぴくりと動いた母の背中を横目に急いで部屋へと入り鍵をかける。
明日世界がなくなるとしたら何を願おう。
道中考えていたことを思い出しながら目を瞑った。


「...ん」
部屋の外から言い争う声が聞こえる。
母の小さな悲鳴と父の怒号
たまに聞こえる鈍い音。
またか。昨夜父に殴られた腕が痛みだした。
そっと窓を開け外の空気に安心する。
(明日世界がなくなるとしたら、2度と世界が来ないように願おう)
そう思って目を瞑り、外の空気に身をまかす。