『…僕は今、どこに居るんだろう?』
別に道に迷った訳じゃないけれど、
ふと、そんな事を考える。
僕は昔から、時折そう思う事があった。
この漠然とした問いの答えを探るとき、
いつも決まって真っ暗な空間と、前後に果てしなく延び続ける一本の道を思い浮かべる。
道には不安な面持ちの自分が立っていて、
それを幽霊のように透明な僕が俯瞰している。
《僕は今、どこに居るのか?》
この問いは多分、その一本道を歩く自分が
発した疑問なんだろう。
辺りは真っ暗で何も分からず、不安で不安で
仕方がない。
この道は何処へ行き着くのか。それを少しでも知りたくて、外の僕に聞いたのだ。
「…それなら 僕は、」
君が道を違えてはいないか。
この道を進んだ先に何があるのか…
外の僕が沢山のことを知り、不安な君に
教えてあげよう。
"もっと知りたい"
そう願う君に応えて。
〈もっと知りたい〉
3月。風はまだ冷たいが、陽射しは暖かい。
仄かな梅の花の香りは冬の終わりを告げ、
木々の隙間からうぐいすの歌が聞こえた。
ああ、もうじき春が来る。
春が来たら何をしよう?花の栞でも作ろうか。
心弾む春の予感。
平穏な日常の中の、少しの変化。
〈平穏な日常〉
「愛と平和」
その2つは似ているようだが、まるで違う。
愛があれば世界が平和になる訳ではないし、
平和な世であれば誰かを愛せる訳でもない。
それでもその2つが一様に謳われる理由は、
何方も容易には手に入らないからだろうか。
〈愛と平和〉
あなたは今、何をしていますか?
私は今、あなたを思い出していました。
『──私ね、死にたいの。』
…そう瞳に涙を溜めて言ったあなたは、
今もまだ生きているのでしょうか?
2人で駆け回った花畑。
木漏れ日の下で猫と一緒に眠った日。
ありがとう、というあなたの声。
また明日ね、と誓って別れた最後の日…
あなたと過ごした日々がある。
それは憶えているのに、とても大切なのに。
その時のあなたはどんな表情をしていたか、
あなたが好きだと言ってくれた私は
どんな私だったか。
…もう、思い出せなくなってしまった。
〈過ぎ去った日々〉
お金より大事なもの。
野に咲く花を集めた花束。
猫と一緒に昼寝する時間。
あなたを照らす木漏れ日。
ありがとう、という言葉。
また明日ね、と結ぶ約束。
ラムネ瓶のビー玉。
四葉のクローバー。
お祭りの光る腕輪。
洗いたてのお布団。
…どれだけ月日が経とうとも
鮮明に思い出せる、あなたの涙。
〈お金より大事なもの〉