『雪』
夢を諦め熱を失い
ゆらり ゆらりと落ちていく
生きたくないけど死にたくない
死にたくないけど生きたくない
贅沢でいて我儘な
矛盾を行ったり来たりする
冷たいままに彷徨い歩き
かじかむ心の感覚は
いつしか麻痺して無くなった
差し伸べられた手を避ける
今のこんな自分では
人肌でさえ溶けそうで
『君と一緒に』
ケン ケン パッ
ケン ケン パッ
つまらないけど
ケン ケン パッ
向かいの坂崎さん宅の
塀に映った影法師
アナタが消えてしまうまで
二人で一緒に
ケン ケン パッ
輪っかの中に
ケン ケン パッ
外さないよう
ケン ケン パッ
アナタはずっと待っている
私が失敗する時を
顔が無くても分かるんだ
ニヤニヤ ニヤニヤ
こっちを見てる
私がこの輪を外れてコケたら
きっとアナタは笑うんだ
私の真似して皮肉にコケて
こっちを見やって嗤うんだ
だから私は
ケン ケン パッ
つまらないけど
ケン ケン パッ
アナタが消えてしまうまで
二人で一緒に
ケン ケン パッ
『冬晴れ』
妬み嫉みの毎日で
人の不幸は冬日和
やれ『あの人が失敗をした』
やれ『あの人が怪我をした』
"ざまぁみろ"
"情けない"
"自業自得の結果だな"
冷える心を暖める
人の不幸をもっとくれ
やれ『あの人が離婚した』
やれ『あの人が自殺した』
"馬鹿なヤツ"
"不甲斐ない"
"無価値な人生お疲れさん"
小馬鹿に人を見下して
悲痛な無様を嘲笑う
心は何時でも冷え込んで
どれだけ待っても春は来ない
『幸せとは』 195
雨が降っては人が減り
傘をさしてはクルクル回す
小さく歌を口ずさみ
街灯だけを頼りに歩く
ピッチ ピッチ
チャップ チャップ
ラン ラン ラン
夜になっては人が減り
靴を履いてはトントン叩く
明るく楽しく軽やかに
待って望んだ夜を行く
『ゆずの香り』
湯船に浮かんだゆずを見て
何の気なしに両手で潰す
見た目ばかりが立派になって
中身はまるで未熟者
ゆずの香りが纒わり付いて
鼻腔の奥を突っついた