『太陽のような』
僕にとっての彼女は太陽
何時だって暖かくて
僕の心を照らしてくれる
……でもね
勘違いをしちゃいけないよ
彼女にとっての太陽が
僕であるとは限らないんだ
悲しいけれど
よくある事だね
『0からの』
「〇〇ちゃんは数字で例えるなら0だね」
放課後の美術室、美術部員としての本分に則って課題の絵を仕上げにかかっていた私に、声がかけられる。
描く事に集中していたから近くまで来ていたのに気が付かなかった。
「……藪から棒に、何の話ですか?」
相手の名前は……知らない、美術部の先輩だった気がするがそれすら不明瞭な記憶だ。
無視をしようかとも考えたが……同じ美術部なら、変に遺恨を残してしまえば後々面倒な事になり得るとも限らない、仕方が無いので対応する事にした。
「私達って話したこと無いでしょ? ていうか、〇〇ちゃんが他の部員と話している所、見たこと無いんだよねぇ……寂しくない?」
「大きなお世話です……話はそれだけですか? それなら早く課題を終わらせたいのですが」
こう言えば大体の人は引いてくれるだろう、イメージは悪くなるかも知れないが、課題をしていたのは事実だ。
「まぁまぁそう言わないで、可愛い先輩ともっとお話しようよ。ね? 良いでしょ? 良いよね? というか拒否権は無いんだけどね! 〇〇ちゃん後輩、私先輩、後輩は先輩の言うことは聞かないといけない、QED」
「無茶苦茶な理論もどきを振りかざさないでください、パワハラで言い付けますよ。……はぁ、分かりました、分かりましたから。話を聞くのでその泣き真似を辞めてください。子供じゃないんですから」
「私は子供ですとも、今でもネバーランドに行けると信じているからね!」
……がめついな、よりにもよって特に面倒臭い人に絡まれた気がする、さっさと話を終わらせて満足させるのが得策だろう。
「それで、何で私は『数字で例えるなら0』なんですか?」
「良い質問ですねぇ(-⊡ω⊡)ゞクイッ」
……イラッとするな私、それでは相手の思うつぼだ。
「それはねぇ…………なんでだったっけ?」
「…………」
「〇〇ちゃん、そんな死んだ魚みたいな目で私を見ないで……! そしてそのまま課題に戻らないで! ごめん、謝るから!」
「…………」
「ね!思い出したから!理由」
「…………」
「無視しないで……!? ほら〇〇ちゃんって何時も絵を描いてるでしょ? 余計な会話もしないで、偶に話すことといえば先生への質問ぐらいじゃない?」
「……はぁ、美術部員なんだから美術室では絵を描くべきでしょう?世間話なら他所でやって下さい」
当たり前だ、学生の本分が学業なのであれば、美術部員の本分は美術活動をする事だ。
そこに疑問の余地なんて無いだろう?
「そうそれ! その考え! 凄いストイックだと思うわけですよ、私は。……だから0っぽいなって思ったんだ」
「……一番大事な"だから"の繋がりが分かりませんが」
「なんて言うかな……こう、誰とも関わろうとしないけど、ストイックで存在感があって美術部にとって大事な〇〇ちゃん。 正の数にも負の数にも属さ無いのに存在感があってとても大事な数字の0……似てない?」
「……いや、別に似てませんが」
「え!?似てるでしょ!」
「いや似てません、そもそも前提がおかしいです。私がストイック……はまぁ、いいでしょう、自覚はありませんが。問題はその後です、私は存在感なんてありませんし、美術部にとって大事な存在でもありません」
どこをどう見てそんな考えに至ったのか理解に苦しむ。
そもそも私は何時も一人でひっそりと絵を描いているのだ……存在感も何も無いだろう、ましてや美術部にとって大事? 意味が分からない。
「……あのね、〇〇ちゃんって絵がとても上手だし、とても楽しそうに描くものだから存在感凄いよ? 〇〇ちゃんのこと尊敬してる部員も多いと思うんだけどなぁ、私もその一人だし……自覚なかったんだね」
「……いや、納得いきません」
「納得いかなくても事実だね!」
「いやいや──」
「いやいや──」
「──?」
「──!」
──────
────
──
……これが私と先輩の腐れ縁の始まりである。
『同情』
貴方は周りを見下した
話はせずとも目が語る
行動せずとも態度が示す
貴方は自分が特別で
普通な周りに同情してる
人とは違う価値観と
人とは違う考え方の
少し変わった自分が大好き
だから貴方は可哀想
変わった価値観だからって
変わった考えだからって
それが優れたものである
根拠は何処にも無いのにね
『枯葉』
あなたの言葉は信用ならない
あなたの言葉はつまらない
あなたがあなたであるかぎり
あなたの言葉は色付かない
枯れた信用
枯れた感情
言の葉枯れた
言枯葉
『今日にさよなら』 95
現在が過去になるように
今日が昨日になるのだろう
今日を生きた私は死んで
明日に生まれ変わるのだろう
ほら……また今日が手を振っている
振り返したくなんてない
死にたくなんてない
私がアインシュタインだったなら
こんな惨めも無かったろうに