『夢を見てたい』
夢を見てたいとは思うけど
それではずっと幻のままだから
夢を現実にしてやった
自分の力で正夢にしてやったのだ
「どうだ凄いだろう!」
白シャツをジーンズにINした服装で
ステージの真ん中
スポットライトに照らされた私が言う
周りはスタンディングオベーション
拍手喝采の大盛り上がり!
ステージの両端からクラッカーが発射され
ヒューヒューという口笛が何処からともなく聞こえてくる
記者が駆け寄ってきて質問する
「どうしてそんな事が出来たんですか!?」
その質問が発された瞬間
今まで騒がしかった周りが
私の答えに期待するように静まり返る
だから私はその質問にこう応えたのだ
「そこに夢があるからさっ!」
その一瞬間後
爆発したように場が盛り上がった
踊り出す人までいる始末だ
この熱は……まだまだ冷めそうにない
…………なーんて夢を見ましたとさ
ちゃんちゃん♪
『ずっとこのまま』
自分の心を取り出した
もう……ウンザリだった
こうして胸にはぽっかりと穴が空いた
私は両手で心を持ち上げて
徐々に徐々に力を抜いていく
あぁ、落ちる
心が零れ落ちる
私の心が
…………落ちた
落とした心は割れ物だったらしい
下に落ちた衝撃で少し欠けてしまっている
だからその心を……さらに砕くことにした
胸に穴を開けたまま、ただひたすらに足で踏みつける
踏みつけて
踏みつけて
踏みつける
裸足で踏みつけていたものだから足裏はすでに血だらけだ
ただその甲斐あって心は見るも無惨に粉々になっていた
その様相に満足した私はそこから背を向けて歩き出す
歩く度に真っ白な床へ足跡が着いていく
ペタリ、ペタリと
赤い赤い足跡だ
私が歩んだ軌跡だ
私が生きている証明だ
この足跡を見つけた誰かが
この足跡を追ってくれたなら
この胸の穴は無くなるのだろうか?
……まぁ、そもそも誰も追っては来てくれないだろう
当たり前じゃないか
私の足跡はこんなにも穢いのだから
『寒さが身に染みて』
あの日あの時あの場所で
寒さがじわじわと染み入った
どれだけ暖かくなろうとも
染み跡だけは私に残る
洗濯は出来ない
漂白剤は使えない
隠す事すら覚束無い
あぁこの寒さ
身に染みて分かったろう?
『20歳』
ピロリン
『成人式もう来てる?』
『いや、行ってないよ』既読
ピロリン
『いつくんの?』
『いや、行かないよ』既読
ピロリン
『なんでやねんΣ\(゚Д゚;)』
『てへっ(´>∀<`)ゝ』既読
ピロリン
『……で、冗談抜きでいつくんの?』
『いや、だから行かないって』既読
ピロリン
『……マジで?』
『マジで』既読
ピロリン
『今どこにいんの?』
『今ちょうど電車に乗るとこ』既読
ブー
『どこに行くつもり!?』
『不動明王を拝みに行くの』既読
ブー
『不動明王!?成人式の日に不動明王!?誰と!?』
『一人』既読
ブー
『一人!?』
『そんなに言われると照れる(/ω\)』既読
ブー
『照れる要素どこよ?!』
~30分後~
ピロリン
『まさかの既読スルー!?腹立つ!』
『三日月』
君が三日月だったから
私の心を突き刺した
君が半月だったなら
君が満月だったなら
こんなに深くは刺さらなかった
この傷が癒えるには
三日月《さんかげつ》はかかるだろう