『キャンドル』
暗闇の中、私はじっと眺めている
チリチリ……チリチリと、揺らめく炎を
細かく揺れるその小さな明かりは、果たして何時からそこにあったのだったか?
なんて……白痴みたいに考える、たった数十分前に自分自身で灯したくせに
小さなキャンドルに、これまた更に小さな炎
私はじっと眺めている
私はずっと眺めている
『たくさんの想い出』
アルバムにはたくさんの想い出がある。
記憶の中の思い出が薄れていってしまっても、アルバムを開けば当時の風景や、そこに写る人々の表情を観る事が出来る。
過去そこにあったであろう様々な想いを、現在の頭の中に描いていけるのだ。
思い出とは過去《むかし》のもので、想い出はいつも現在《いま》にある。
私はそんな風に考える。
『冬になったら』
春に出会い
夏に近づき
秋にすれ違い
冬に別れる
……なんて、適当なイメージを持ってはいるが。
そもそも出会いのない私には、季節なんて関係ないか。
…………あー、寒ぃな。
『はなればなれ』
もともといっしょだったのに
はなればなれになっちゃった
とってもかなしいなぁ
でももうだいじょうぶです
はじめからはなれていたら
これからさきは
はなればなれになることはないから
かなしさなんてかんじません
……だよなぁ?……そうだよなぁ??
…………あってるよなぁ???
『子猫』
お前さんと出会ったのはいつ頃だったか?
「…………」
老猫は応えない
お前さんがまだ子猫の頃だったか?
「…………」
老猫は応えず
そっぽを向いた
お互い歳をとったなぁ。
「…………」
老猫は応えず
そっぽを向いて
欠伸をひとつ
……そろそろ飯の時間か。
「…………!」
老猫が此方を向いた
……お前さんは子猫の頃から現金なヤツだ。
「…………」
老猫は応えず
そっぽを向いて
欠伸をひとつ
猫に現金、なんてな……ふふふっ。
「……にゃーお」
老猫が呆れたように鳴いた