「お誕生日おめでとう!」
今日は家族の誕生日だ
クリスマスが近いのだがワガママ坊やだったので誕生日とクリスマスでそれぞれケーキが我が家では出てくる
「いただきま〜す♪」
そんなにぎやかな朝で1日は始まる
そして夜は
「はいこれ。お風呂に入れてね。」
そう、冬至の定番柚子である
ケーキを食べ満足感ある1日の締めは柚子の香るお風呂に入る
これが私の毎年訪れる今日であった
「「3,,,,2,,,,1,,,,それっ!」」
ボチャン
「くそっ…また失敗かぁ〜」
「先輩、今度はここの角度と厚みを少し変えてみませんか?」
「あぁ…そうだね。その方が力を流しやすいね。やってみようか」
こうして今日もまた実験と失敗を繰り返す
『あいつらまたやってるよ』
『本当に出来るわけ無いのにな、アホらし』
周りになんと言われようとも私達は本気で目指しているのだ
夏に大空を駆け上がり琵琶湖を眺める鳥人間を
この世界には魔法が存在する
一部の女神の祝福を受けた者はその歌声に魔力を乗せることができるのだ
そして私、ベルもその祝福を受けた1人である
しかし…
ドーン‼
「またやっちゃった…」
私は力の制御が上手くできずついつい様々なものを破壊してしまう
今日は桶に水を貯めようとして桶に穴を空けたのだった
祝福に目醒める前から歌う事は大好きだった
下手の横好きとはよく言われてたけど
今も歌うのを辞めたくない、そんな一心で制御の訓練に励んでいる
今日もベルの歌声はトラブルの音を奏でているのであった
自分は人より存在感が薄いのかもしれない
そんな場面が自分にはよくある
アルバムの写真には集合写真以外に自分の姿がなかったり
複数人でグループを作ると自分を忘れられていたり
自分の発言が誰にも届いていなかったり
大丈夫、いつものこと
そんな風に言い聞かせながら過ごしていた
年月が経ち自分は他人から認識されない透明人間
いつしか本当にそうなっていた
見えてないふりであって欲しい、どうして鏡にも自分の姿は映らないの?何か悪いことでもした?
毎日毎日毎日自分は自分の存在しない世界で届くことのない声をあげて叫び続けた
しかしその日は突然やってきた
自分の姿は本来の姿では無いかもしれないがそんなことは関係ない
『はじめまして!バーチャルライバーの──です!これからよろしくね♪』
私はバーチャルの世界を通してこの世に存在する1人の人間に戻った
自分の存在を現実に訴え続けるために
「今日のお鍋は柚子風味♪」
我が家の冬ご飯は鍋一択である。
今日は休日
休みの日は引きこもるに限る!
そんな気持ちで1日を過ごし夜は鍋を食べる
これぞ冬って感じ?
そしてお風呂で身体の外も中も温めたところでお布団に入る
『にゃ〜ん』
そこには先客がいた
我が家の湯たんぽ兼いたずら係の猫である
冬場は寒さからか布団で私の湯たんぽとして夜は一緒に寝ているのだ
昼間も寝てたので夜中に突然スイッチ入ることがあるのでいたずら係も兼任しているのだ
「明日からまたお仕事頑張らなきゃな」
『にゃ〜(スリスリ)』
こちらの事情などつゆ知らず、のんきに甘えてくる猫
この子のためにももう少し、もう少しだけ頑張らないとな
「おやすみ。私の可愛いこねこ。」
こうして一緒に夢の世界に飛び込むのだった