二度と
あなたに逢えない
悲しみは
もう
海の底に沈めましょう
あなたを想い
流した涙が
波の歌声も
魚たちの呟きも届かない
深い深い海の底で
いつの日にか
小さな真珠となって
優しい眠りにつけるよう
祈りをこめて
願いをこめて
この悲しみを
沈めましょう
# 海の底
君に会いたくて
ただ会いたくて
理由もなく
連絡もせず
夜道を走り
君の家の前で
声もかけずに立ち尽くし
それだけで
来た道を戻った
遠い日の熱い想い
向こう見ずで
一途で
切なくて
愛おしい
恋の想い出
# 君に会いたくて
あのひとを亡くした日から
書かなくなった
日記帳
開けば瞬時に
折々の想い出が
溢れ出てくるから
いまはまだ
読み返すのは
あまりにも
辛すぎる
涙が乾いて
懐かしさと愛しさだけで
読める日が来るまで
その日まで
封印して
机の引き出しの一番奥に
仕舞い込む
# 閉ざされた日記
眠れぬ夜は
心の中に
木枯らしが吹き荒れる
泣きながら
唸りながら
叫びながら
あのひととの想い出を
舞い上がらせ
辺り一面に散らかして
今夜も
木枯しは吹き荒れる
わたしに届く春は
まだ
遠い
# 木枯らし
あのひとがいない
この世界で
すべての窓
すべての扉を閉じて
あのひととの想い出だけを
抱きしめた日々
心を決めて
窓を一つ開ければ
凍てつく寒さの中の
微かな陽射しの温もりに
思わず
ほっと息をつく
新たな世界が
一つの窓から
広がり始める
# この世界は