あなたが逝って
もう何年も経ったのに
あなたへの想いは
少しも褪せることなく
乾くことのない涙と
しんしんと降ってくる寂しさに
ただ蹲るだけの不甲斐なさ
何を見ても何を聞いても
あなたへと飛び立つこころは
止めようもなくて
こんなわたしの様子には
きっとあなたは
困惑してるはず…
ねえ
次の扉を開けるには
どうすればいいの?
# どうすればいいの ? (327)
あなたと
最後の別れをした日から
あなたは
思い出の中のひと
あなたの眼差し
あなたの言葉
癖や仕草
歌声 笑い声
ひとつひとつを
わたしの心は憶えている
あなたと過ごした日々の
穏やかで優しい記憶は
常に
わたしを満たし
潤し
癒やし続ける
あなたとの想い出は
あなたがわたしに
遺してくれた
唯一無二の
宝物
# 宝物 (326)
クリスマスシーズンの街は
まるで宝石箱
キャンドルの灯りのもと
作り笑顔を纏って
安っぽい愛を囁くのは
12月限定の恋人たち
こいびとよ
あなたはいま
どこで
なにをしているのでしょうか
クリスマスの夜だけは
たとえ
一日限定でも
あなたの微笑みを
もういちど
冷たく凍える
わたしの手に
届けて欲しい…
# キャンドル (325)
さようなら
現世で結んだ
赤い糸は解かずに
約束通りに
来世で
再び逢う日まで
# はなればなれ (324)
猫を飼ったことがある
その頃の彼の愛猫の名前が
夏目 (ナツメ) だったので
わたしの猫には龍之介と名付けた
夏目漱石さんと芥川龍之介さんから
付けた名前だったが
夏目も龍之介も
どちらも早死だった
後で知った事だが
夏目漱石さんは38歳で
芥川龍之介さんは35歳で
二人共若くして亡くなられている
宇野千代さんや
瀬戸内寂聴さんに因んだ
名前にしていたら
長生きしていたのかも知れないと
思ってみたりもした
龍之介の子猫の時の
お腹の柔らかさと温もり
ほわほわの感触は
今でもはっきりと
この掌に残っている
いつの日か
また子猫や子犬と一緒に
暮らせたらと思う
# 子猫 (323)