愛していると
素直に
言えなかったのは
言葉にしてしまった瞬間に
呆気なく
君がわたしの前から
消えてしまいそうで
ただ怖かった
臆病だった
互いに
読み取れなかった
それぞれの想い
すれ違ってしまつた
心と心
元に戻せないまま
無情な季節は
足早に
駆け抜けて行く
# すれ違い (308)
樹の葉たちは
散りゆく日に向けて
最後の化粧に余念がなく
気の早い葉は
既に舞い落ちて
風に吹かれ
道端へと運ばれている
執拗に心に絡みつく
あのひとへの想いも
この落葉のように
鮮やかに燃え尽き
枯れ果て
散ってしまえば良いのに と
秋晴れの空を見上げながら
深い溜め息をつく
# 秋晴れ (307)
もう終わったこと
戻り道も無ければ
この先に交差点もない
行き止まりの道を
選んでしまった二人には
未練は
苦しみしか生み出さない
解っている
解っているのに
いまも
あのひとの面影は
心に棲み続けている
# 忘れたいのに忘れられない (306)
朝のやわらかな陽光を
グラスに注いで
一気に飲み干す
少しずつ 少しずつ
優しい気持ちが戻ってくる
尖った気持ちが消えていく
心が傷んだ時の
わたしの特効薬
# やわらかな光 (305)
がらんとした街並に
落ち葉だけが舞う
夕暮れ
風の向こうから
忍び寄る冬の足音
この寒空に似合うのは
祈りうたひとつ
祈りうたは
あのひとへの想いの
安らかな眠りだけを願う
わたしの恋の挽歌
寒さに震える唇で
呟くようにうたえば
秋はいよいよ
白さを増しながら
季節を変えていく
☆ 祈りうた (304)