別れ際に
差し出された
あのひとの右手
少し長めの握手で
言葉にならない
サヨナラを
あのひとに
背を向けて歩き出す
わたしの足音が
凍てつくように
心にこだまして
我慢していた
別れの哀しみを
溢れさせる
# 別れ際に (290)
烈しくて
冷たくて
驚かせて
いきなり
呆気なく
終わった
通り雨は
あの人と
わたしの
恋物語に
似ていて
若かった
あの頃を
久びさに
思い出す
# 通り雨 (289)
雑木林の中
落ち葉を踏む足音が
シャリ ショリ シャリ
木漏れ日の中を
シャリ ショリ シャリ
吹き渡る風の中に
わたしを呼ぶ声がしたようで
思わず振り返ったけれど
あれは
秋が
行き過ぎる音
ドングリの実を
両手いっぱいに
拾い集め
青空に向けて
ぱぁっと
一斉に放り投げたら
林の静けさは
一瞬で
万雷の拍手に変り
秋の
カーテンコール
# 秋🍁 (288)
愛 優しさ 想い 情
喜び 怒り 悲しさ 苦しさ
寂しさ せつなさ 辛さ ………
形の無いものは
心模様だけでも沢山ある
形が無く
目に見えないからこそ
心を澄ませて感じ取りたいと
思っているけれど
強すぎた夏の日差しに
心は
カサカサに乾いて
錆び付き始めている
透明な月の光を浴びて
錆び落しをしなくては…
# 形の無いもの (287)
ジャングルジムに
登った記憶がない
どこから登り始めても良く
同時に何人も登れる
ジャングルジムが苦手だった
ところどころ剥げ落ちた塗装から
鉄錆びの焦げ茶色が
見えているのも嫌だった
休み時間や放課後
ジャングルジムの一番高い所には
必ず誰かが居て
とても威張っている様に思えて
近付きたくなかった
大人になった今では
ジャングルジムに登れるのは
子供時代だけなのに
それを放棄したことを
残念に思うし
ジャングルジムの
テッペンからの風景が
当時の私の瞳に
どのように写るのか
知りたい気もする
# ジャングルジム (286)