雑木林の中
落ち葉を踏む足音が
シャリ ショリ シャリ
木漏れ日の中を
シャリ ショリ シャリ
吹き渡る風の中に
わたしを呼ぶ声がしたようで
思わず振り返ったけれど
あれは
秋が
行き過ぎる音
ドングリの実を
両手いっぱいに
拾い集め
青空に向けて
ぱぁっと
一斉に放り投げたら
林の静けさは
一瞬で
万雷の拍手に変り
秋の
カーテンコール
# 秋🍁 (288)
愛 優しさ 想い 情
喜び 怒り 悲しさ 苦しさ
寂しさ せつなさ 辛さ ………
形の無いものは
心模様だけでも沢山ある
形が無く
目に見えないからこそ
心を澄ませて感じ取りたいと
思っているけれど
強すぎた夏の日差しに
心は
カサカサに乾いて
錆び付き始めている
透明な月の光を浴びて
錆び落しをしなくては…
# 形の無いもの (287)
ジャングルジムに
登った記憶がない
どこから登り始めても良く
同時に何人も登れる
ジャングルジムが苦手だった
ところどころ剥げ落ちた塗装から
鉄錆びの焦げ茶色が
見えているのも嫌だった
休み時間や放課後
ジャングルジムの一番高い所には
必ず誰かが居て
とても威張っている様に思えて
近付きたくなかった
大人になった今では
ジャングルジムに登れるのは
子供時代だけなのに
それを放棄したことを
残念に思うし
ジャングルジムの
テッペンからの風景が
当時の私の瞳に
どのように写るのか
知りたい気もする
# ジャングルジム (286)
電話
それは
便利で
淋しいもの
それは
不便で
頼りないもの
そしてそれは
あなたと
わたしを結ぶ
細くて脆い
ひとすじの糸
声だけですか
逢えないのですか
# 声が聞こえる (285)
冴えわたる
月の明るさに誘われて
想いのしずくを
ぽつり ぽつりと
零す夜
あのひと宛のラブレター
出すこともないラブレター
書いては破りの繰り返し
秋の夜長は罪作り
片想いのせつなさが
涙とともに溢れだす
# 秋恋 (284)