あのひとへと続く
この道は
想い出の
辿り道
戻り道
行きはよいよい
帰りはこわい
こわいながらも
通りゃんせ
通りゃんせ
帰り道は
いつも
まよい道
なみだ道
✩ 通りゃんせ (180)
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睡魔に誘われ
眠りに落下
浅く
深く
そして また
朝が
いつものように
哀惜を
連れてくる
# 落下 (179)
「未来」には
全く無関心で
無反応な心
悲しみと想い出に
囚われて
其処から抜け出す
気持ちも気力も
持てなくて…
あのひとを失った
後遺症は
まだまだ続きそう
# 未来 (178)
一年前と今日と
わたしに何か変化が
あっただろうか
あのひとを失ってからは
呆れるほど
時の流れに
追いつけないでいる
それでも
朝を迎える度に
戻れない日々への
哀惜だけを残して
悲しみは 哀しみに
痛みは 傷みに
想いは 想い出に
少しずつ
少しずつ
確実に
かわっていく…
# 一年前 (177)
あのひとと
初めてのデートで
書店に寄った時に
「好きな本があれば
プレゼントするよ」
そう言われて選んだのが
文庫本サイズの
『ふるさと詩集』
数日後
「あの詩集 僕も買ったよ」と
嬉しい報告がありました
✢
『ふるさと詩集』日本図書センター
室生犀星から石川啄木まで
47名の作詩が収められています
# 好きな本 (176)
雨は今にも降りそうなのに
なかなか降らなくて
この曖昧な梅雨空の下
わたしは泣きたいのに
泣けなくて
あのひとの
想い出ばかりが増えすぎて
あっちこっちで
足をとられて躓いて
ああ
きれいにさっぱりと
忘れてしまえるものならば
どんなに心は楽でしょう
「セロリって
インクの匂いがするから…」
そう言った
あのひとの台詞のせいで
今ではわたしも
セロリが食べられなくなりました
# あいまいな空 (175)