亡くしかけている
心のひとかけらを
手放すまいと
懸命に虚空を摑む
想いは
すでに想いではなく
取り残された
ただの骸でしかない
軋んだ音をたてながら
すれちがって行くのは
声になれなかった
言葉たち
たとえ
あなたの腕の中に居たとしても
温もりが届いてこない寂しさは
苛立ちを突き抜けて
諦めに変わるから
大人になるのを邪魔をする
背中の羽根を
一本ずつ抜きながら
流れるその血で
残りの愛を描く
✩ 残りの愛 (139)
扉の鍵を失ったのは
あなたでも
わたしでもない
鍵は
初めから
なかった
開かない扉の前で
あの頃のわたしたちは
ただ虚しく
同じ夢ばかりを見ていた
扉が開かなかったのは
二人の
開ける努力と
勇気が
足りなかっただけ
だから今
思い出の部屋の扉は
開けても
二人が立ちすくんだ
あの
一番奥の扉の向こうに
どんな「未来」が
待っていたのか
知る由もない…
✩ 扉 (138)
あなたの刃が
わたしの心を
突き抜けるほど
深く
斬りつけても
あなたへの
わたしの想いは
まるで
零れた水銀のように
再び
丸く
元の形に戻ろうとする
涸れ果てるまで
傷口に注いだ涙は
虚しさだけを残して
鮮やかに
乾き始める
叫ぶほどの愛は
とうの昔に
終わったけれど
あなたへの想いは
まだ
眠ることが
出来ずにいる
# 愛を叫ぶ (137)
不意に現れて
ほんの一瞬だけ
わたしの肩で
羽を休めた
モンシロチョウ
捕まえようとした指先を
するりと抜けて
あっという間に
ひらひらと何処かへ
あのひとみたいだと
思うココロに
苦笑い
# モンシロチョウ (136)
✢ ✢ ✢ ✢ ✢ ✢
ぼくのこころを
がんじがらめにする
きみの
そのやさしさが
ときどき
ぼくを
ふあんにさせる
きみがいないせかいでは
もう
いきていけなくなりそうで
✩ ふあん (135)
夜の深さに
独り沈む時
封印したはずの
あなたへの想いは
涙とともに
熱く溢れ出し
煌めいていた
ふたりの日々が
寒い心に
鮮やかによみがえる
どんなに
時が流れても
あなたを失った
哀しみは
しんしんと
雪のように
降ってくる
# 忘れられない、いつまでも (134)