街の雑踏の中に
色も型も
あのひとのものと同じ
車を見つける
高鳴る胸と
すぐに
ナンバープレートを見る癖は
時を経ても
治ってはいなくて
車違いに
安堵の気持ちと
少しの落胆
走り去るその車を
目で追いながら
過ぎ去った日々の
痛い心を
また
抱えてしまう
# 過ぎ去った日々 (64)
もしボクが
風になれたなら
朝露輝く草原で
草花揺らして
戯れて
昼には深い森に行き
樹木の枝を渡りながら
小鳥たちと一緒に歌い
夕暮れになれば
海に出て
沈む夕日に手を振って
夜は
星の空を散歩しよう
疲れた時には
三日月に腰掛けて
一休み
もしボクが
風になれたなら
夜更けにこっそり
月影で
あなたを偲んで
一粒の
涙を零すことだろう
✩ 風になれたなら (63)
✢ ✢ ✢ ✢ ✢ ✢
健康な身体と健全な心
家族と愛する人達
# お金より大事なもの (62)
月の光の
零れる夜は
想い出の小箱を
そっと開けて
あのひとの面影
抱き締めて
出さない手紙を
出せない手紙を
書きましょう
お元気ですか
いま 何をしていますか
相変わらず 忙しいのですか
煙草の数は 増えてはいませんか
お酒は 飲み過ぎてはいませんか
待つのは 無駄なことですか
……
書いた手紙は
月夜の海に
祈りを込めて
流しましょう
いつか
優しい
波の音となって
あのひとの耳に
届くよう…
# 月夜 (61)
どこかで
この絆を断ち切らねばと
ナイフを握りしめて
もうどれだけ
立ち尽くしているだろう
心の奥に
くい込むように絡みついた
想い出を振りほどき
切り捨てて
忘れてしまえば
そこから始まる
新しい日々
判っていながら
手にしたナイフは
躊躇いの時の中で
少しずつ
蒼く
錆びていく
# 絆 (60)
空が
どこまでも
青い日は
たまには
ココロを
ジャブジャブ
お洗濯
広い野原で
のんびりと
風に吹かれて
乾かせば
涙のシミも
きっと綺麗に
消えるでしょう
# たまには (59)