わたしの
想い出のなかで
あのひとは
どのシーンも
順光に照らされて
輝き
煌めいている
あのひとに
逆光は
そぐわない
# 逆光 (17)
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想いに
致死量というものが
あるならば
これまで以上に
もっと
もっと
あのひとを想いましょう
心のすべてを
あのひとへの想い
それだけで
満たして
満たして
死んでいけるなら
それも幸せ…
✩ 致死量 (16)
明け方に夢を見た
悲しい夢だった
夢のなかで
わたしは号泣していた
泣きながら
生きていることを
辛く虚しく思っていた
目覚めてからも
その悲しみは
深い霧のように
ひんやりと冷たく心に広がり
暫くの間
晴れることなく立ち込めていた
無性に
君の笑顔に
逢いたくなった…
✢
泣き虫の
わたしの涙を
乾かすのは
いつも
日だまりのような
君
# こんな夢を見た (15)
時の舟は
ゆるやかに
あのひとの
もとへと
動き出す
いまさらの
恨みごとを
積み残して
# タイムマシーン (14)
ふたりの指先に
様々な想いをぶら下げて
執拗に
絡まっていた糸は
あなたが最後に見せた
その瞳の水たまりに
緩やかに
解けていく
今夜
わたしたちは
無言で
再び
ふたつに
戻る
# 特別な夜 (13)
サヨナラなんて
とても
言えそうにないから
あのひとを想う心と一緒に
サヨナラの言葉を
くるくると
巻き貝の殻に閉じこめて
そっと
海に
流しましょう
波が唄う子守歌に
この哀しみも
いつか
やさしい眠りにつくでしょう
深い海の底へと
沈んだら
こぼした涙の雫さえ
きっと
真珠にかわるでしょう
# 海の底 (12)