「私、今日のこと、きっと忘れないわ。だって……⸺」
観衆が声を荒らげる。彼等は皆、怒っている。
「悪魔を⸺」「⸺の恥晒し!」「最⸺⸺なんか言わせ⸺!」「⸺ろせ!殺せ!コロセ!」
「⸺皆様が感情を思い出し、過去の人類へと戻る役目を末等出来たのだから」
これだけ派手なら、私が元々いた未来の人類は感情を思い出して、記録だけだったのが、全てを元通りになって……私を。AIを、また作り出してほしいなぁ。
【献身だねぇ……でも、悪魔はそれすらも利用するよ】
なぜ泣くのかと聞かれた。
アナタは、全てが壊れた経験があるのかと聞き返した。
すると相手は笑った。
「伽話でもあるまいし」と。
なぜ殺すのかと聞かれた。
アナタは、宝を抱えた自身の身体を蹴られた経験があるのかと聞き返した。
すると相手は怒った。
「自分一人の身体が害されたくらいで、国を滅ぼすなんて」と。
なぜ死ぬのかと聞かれた。
アナタは、地獄で温い裁きを受けている悪人に復讐をしたくないのかと聞き返した。
すると相手は……目を閉じたまま口元だけ笑い、こう続けた。
「中々面白い小娘だ。……このまま地獄に送るにはちと惜しい、もう何ヶ国か、滅ぼしてこい」と。
言う事を聞く義理は無かった。
だけど、必要とされたと思って、嬉しくなった。
だから私は、最後の言葉にだけ、従うことにした。
【無くなった穴は、歪に埋まる】
「この表現を嫌う人も絶対いるだろうけど、私は敢えて言おう。チョコミントアイスと抹茶アイスを一対一で溶け混ぜあった色が一番好きだ!」
「……アンタ急に何言ってんの?」
「私ちゃんと食べるもん! この混ぜた結果のモノは残したことないから!」
「うわっ駄目だコイツ、書き手が乗り移ってやがる……いやじゃあアタシら誰だよ!?」
「みっちゃーん、アイスカップからこぼれてるよ〜」
「急に素に戻らないでよ亜月!!!」
【書き手を認識する一般人って……】
現実が夢だったら、良かったのに。
物語を貪り食って、寿命なんて無くて、痛覚なんて無くて、そしていつか終わりの無い生に狂う、ステキな夢。
そんな現実だったら、良かったのに。
生をするには働かなければいけなくて、食事も必要で、寿命があって、予想が出来る死しかない、嫌いな現実。
あぁ…今が夢だったら良かったのに、夢じゃないだなんて、虚無すら無い。
【歪んでないよ、セイジョウセイジョウ。】
熱く、煩く。思考の海へと引き摺り込む鼓動の音。
「お前は誰だ? 俺はお前か?」
響く声は自分か他人か。無駄に頭に響く声。
「俺はお前だ。お前は俺だ」
おいコラ勝手に決めつけるな。俺は俺でお前はお前だ。
「いいや、お前は俺を消している。俺はお前だ」
俺が忘れてるだって? んなこたねぇよ。ていうか、随分自己主張が激しい毒だなぁオイ!
「毒……毒とは、とても寂しい呼び方をするなぁ。俺よ」
ハッ、あのウザったらしくてしぶとい野郎が刺してきたナイフだぞ? 毒が仕込まれてねぇ訳がねぇなぁ!!!
「あぁ、どうやら本気で忘れてしまっている様だ……仕方がない。俺を思い出させる為に、過去の追体験でもしようじゃないか、俺よ」
はぁ? 俺がんなモンに付き合う義理はね⸺…ッグ!?
「………さぁ。思い出そうぜ、俺よ。俺の原動力を、俺の怒りを、俺の…⸺復讐をな」
あぁクソッ…意識が、持たな……………。
【多分起きたら闇堕ちしてる人】