「あなた……誰?昔の私の知り合いなの?」
色々あって離れていた嫁を迎えに行ったが、嫁は記憶喪失になっていた。はぁ!?嫁が幼少の頃から少しずつ調きょ⸺ん”ん”っ、洗の……じゃなくて、そう!教育!教育が無駄になったじゃないか!!!
昔は、俺がいなきゃ何も出来ない可愛い子だったのに、自分から進んで家事や仕事して、交友関係も良好そうで……うぅ、閉じ込めたいなぁ。
「あなたのこと、よく知らないけど…これからまた仲良くなれば思い出せるかな?ともかくよろしくね!」
えへへ……明るいなぁ。
俺が何もしてなかったらこうなってたんだろうな。だけど、面倒くさがりで俺がいないと何も出来ない方が俺的には好きなんだよなぁ。でも、これからまた俺がいないとダメな子にしてあげたらいいかな…いいよね?
僕はもう、君がいないと生きていけないから、それくらい許してよ…ね?
【記憶喪失ルートのハートとスペード……あれ前回もスペードお前…話だった気が()】
私は弱いのに、何故アイツらと戦った?
実戦経験なんて無いのに、どうして立ち向かった?
戦ったことなんて、空想上でしかないのに。
⸺いや、理由は分かりきってる。
私の後ろに、守りたい人たちがいるから。
私の天使ちゃんと、天使ちゃんの宝石ちゃんがいるから。
「⸺さん、もう…やめてください」
「嫌だよ。私がこうしているだけで、私の”大切”が傷つかないなら。私の”生”なんて、溝に捨ててやるさ」
「そん、な……」
私と天使ちゃんが会話していることを、好機と思ったのか、敵の一体が近接攻撃を仕掛けてくる。が、敵が放った攻撃は、私が張った結界に阻まれ消失する。でも、結界は割れてしまった。やっぱり脆いな…⸺あ。
しくった…相手は一人じゃなく、二人。それを一瞬、忘れてしまった。
剣が⸺鋭い刃が、天使ちゃんの心臓を刺して、宝石ちゃんへ、次の刃を構えていた。ゆっくりと、ゆっくりと。
⸺本当、この無駄に回る頭は嫌いだ。
役に立つ時はある。さっきの結界を張ることとか、長ったらしい呪文の詠唱時とか。
でも、こういう時。
決して間に合わない終わりが迫っている時、現実を突きつけてくる、この頭が、大嫌いだ。
こんなとき……に。あの人に、頼れたら……いいのに。
「こんな時こそ、隣りに居てよ……バカ」
そんな私の呟きは、声に出てしまったらしい。なんでって、それは⸺。
「やっと見つけた。やっと俺を呼ぶ声が聞こえた。ははっ、俺がいないくせに、随分充実してたみたいだな?」
⸺バカが、私の声を聞いたと、突然現れたから。
【お前…そういうとこやぞ……】
ココロはわからない。
どうして目から水が出てくるの?
どうしてココロにそんな顔をするの?
どうしてココロは、こんなにイタイの?
ココロに刺されて、クルシイはずなのに。ニクイはずなのに。ココロのことを、抱きしめるのはなんでなの?
「⸺どれだけ時間が経っても。どんなに姿が変わっても。母親が自分の子供を間違えることはないさ……おかえりなさい、心」
……なんで、ココロの声は、出ないの?
【変わらない愛と変わる現実】
「⸺大丈夫か?」
「……ぅん」
「そうか」
いつもこうだ。いつも君に背負われて宿へと向かう。
情けないなぁ…ボク。
「お前は弱いんだから、オレに全部任せればいいんだよ」
ダメだよ…王様から勇者と認められたのは、ボクだから。ボクが頑張らないと。
「まぁ、リオがやりたいなら、何時でも手伝うからな?」
「うん、ありがとう…カナン」
あぁ…本当に情けないよ。
カナンはボクが居なければ今頃、いい旦那さんに嫁いで、子供を背負っていてもおかしくないのに。ボクが背負われているなんて……本当、君の背中は頼もしすぎるよ。
【カナンはTS転せ(((殴】
君は会うたび姿が変わる。
服装も、身長も、年齢も、声も、性別も。
いつも別れ際に聞く。本当の君はこの姿なのか、と。
いつも君はこう答える。今見てるのが自分の姿だ、と。
⸺私は、”本当”の君を知りたいんだけどな…。
◆◇◆◇◆
「奏叶様、いつも弊社の人材派遣サービスをご利用いただき、ありがとうございます」
「ん〜、いいっていいって。あの面白い玩具相手なら、何時でも新人さんの練習に使ってよ」
「しかし奏叶様、あの方は親友ではないのですか?」
「うん。だってアイツ、別人をボクだと認識する馬鹿だもん。良くて長く遊べるタイプの玩具だよw」
「そうですか……⸺知らなかったなぁ。でも、君も知らなかったでしょ?私の実家と、私の趣味変装、特技演技」
「………え?」
【だって、気になる相手は徹底的に調べろって、お婆ちゃんが言ってたから…】