青空の下、黄色いひまわりが広がるこの畑に今年もやってきた。このひまわり畑の真ん中、そこにはかつての戦友が眠る石碑がある。二十年前のあの戦争で、私と彼は同じ飛行隊に所属していた仲だった。彼とは幾多もの戦場を飛び、そして多くの敵を地上へと撃ち落としてきた。彼とは良き戦友でもあり、ライバルでもあった。私と彼はそのうち軍でエースパイロットとして名を馳せるようになった。それと同時に敵から恐れられる存在でもあった。彼と私が乗っていた二機のF15の垂直尾翼にはひまわりの花とその上を飛ぶ紫色の蝶がマーキングされていた。敵はそのマークをみるたび、「ひまわりの蝶が現れたぞ」と戦意を自然と削ぐような存在となっていた。戦況は優勢に進み、いよいよ決戦の地である敵首都での戦闘中、彼は残党の敵機から放たれた機関砲に被弾してしまう。コックピットの彼は血が吹き出す右腕の大きな穴を必死で掴み、押さえながら操縦桿を握りしめていた。彼は最期まで家に帰ることだけを考えていた。しかし、悲しいかな。彼は力尽き、このひまわり畑に堕ちた。私は彼の機体が爆発し、燃え上がるところを見ていた。そして、私は自然と敬礼していた。炎はひまわり畑に広がっていく。その姿は、彼の命の最期が如く、激しく燃え上がっていた。戦勝パレードに彼の姿は無く、仲間が心配して彼の行方はどこかと私に聞いてきた。私はその時初めて、彼が死んだということを実感し涙を流してその場に泣き崩れた。その後、私と仲間たちは、彼の最期の地であるあのひまわり畑に向かった。着くとそこは黒く焦げて、焼け野原になっていた。その畑の真ん中に一つの瓦礫の山を見つける。彼の機体の残骸だった。私はその残骸を一つ一つトラックに運んでいく。その作業の中で、仲間があるものを見つけた。ひまわりの花と紫色の蝶がマーキングされたボロボロの垂直尾翼と彼のヘルメット、そして彼の亡骸まで。私と仲間たちは彼の亡骸をその地に埋めると垂直尾翼を石碑として建て、彼のヘルメットと彼が好きだったひまわりの花と種、そして酒を置いた。彼の命が蝶のようにあの大空へ上がっていくのが感じた。その後、私と仲間たちは戦争経験者として語り部となる。そして、結婚し子供が生まれ、家庭を持つようになってから。毎年のように家族とあのひまわり畑に行っては彼の遺影の前に立った。それから数十年後、白髪生えシワまみれとなった私は、今年もこのひまわり畑の彼の遺影の前に立つ。かつて焼け野原だったこの地は今は黄色一色に染まり、ひまわり達は西の空に沈もうとしていた太陽の方を向いていた。私は遺影の前にひまわりの花と種と酒を置き、そして彼のヘルメットに触れた。その瞬間、ひまわり畑に優しい風が吹き抜け、一匹の蝶が大空に舞い上がった。紫色の蝶、それはまるで彼が大空を飛ぶことを楽しんでいたときのように。彼はこの空の上で生きている。そして、今も私を見ているのだろう。私は彼の遺影に向けて敬礼すると、一匹の蝶は遺影の上で止まり、私の方をじっと見ているのだった。