その辺の女性とは、違う。
この喫茶店に、来て、8回ぐらい。
実際には、チラッと見た・・だけだ。
俺は、高速道路を車で、SAによる。
中に、自販機が並ぶ。
「ここのコーヒー、まずいんだよなぁー」
あの喫茶店『森の中』のコーヒーとは、違いすぎる。
「ま、仕方ないか」
自販機の中で、まずいコーヒーが、紙コップにたまってゆく。
と、右側を、ふっと見た。
あの、女性だ。
紙カップが、まずいコーヒーをいっぱいにした。
まずい(やめる)コーヒーは熱々だ。
一口飲む、
「あっつ!」
と、言う、女性は少し笑った。
「すんませんっ」
と、言うと、女性は、
「えーとっ、あっ、思い出した、喫茶店、で見た人」
「あっ、思い出した、『森の中』」
俺は、そう言った。
喫茶店に通うようになった。
喫茶店の名前は、『森の中』
「どこ?」
と、友達に聞き、その喫茶店へ行った。
まさに、森の中だった。
そこの、コーヒーは、一口含んだら、いい香りが、抜け、酸味と苦味が一体となって、入ってくる、少し塩分の味も、分かるか、分からないか。
何度か飲んで、分かるくらい・・・。
いつも、カウンターの席の奥に座る。
あまり、大きくはない、ロッグキャビン。
そのカウンター五つ横に、スーツを着て、ネクタイはしていない男が。
「なかなかかっこいい男だな~」
テレビに出てそうな感じだ。
ドアベルが鳴り、女性が来た。
美女な女が、右側の一番奥に座る。
俺は、左側の一番奥。
俺は、八回この喫茶店に来ている。
かっこいい男には、目も触れず、座った。
「コーヒーひとつ」
と、いい、立ち、女性雑誌を取り、また同じ所に座る。
私が・・・私は・・・女です!
喫茶店の店長です。
い~え、恋愛ではなく、コーヒーを淹れるのが上手いのです。
コーヒーは熱々で、脳にまでにくる~ぐらいおいしいコーヒーなのです。
最初、この喫茶店に来たのは、友達と来たときだった。
ドアを開けると、ドアベルが鳴り、マスターが、
「いらしゃいませ」
と、言い、コーヒーを淹れ、すぐに、友達と私に、コーヒーが出てきた。
私たちは、ペチャクチャしゃべると、コーヒーを、飲んだ。
「もうねぇ・・ごくっ」
息が止まるかのように、
『なんじゃこりゃー!・・・俺は死にたくないよ・・・』
と、思った。
それから、なんじゃこりゃー!コーヒーを飲むために、かよっている。
都市の夜、静寂な都市。
ぽつぽつと、街灯がついたり、つかなかったり。
そこに、喫茶店がある。
マスター、女性。
中にいるのは、二人。
喫茶店のマスターは、無口。
ジャズが、小さく聞こえるか、聞こえないか。
小さく、普通の、喫茶店。
女性が、
「ららら、らろ、ららら、らろら」
コーヒーを、飲む。
マスターは、その、「ららら」を聞いて、少し、微笑する。
そんな、喫茶店。
Barのバーテンダーにカクテルを作ってもらう。
『キッス・イン・ザ・ダーク』
君と飲むつもりだったが、飲めない。
君は別の誰かと・・・。